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2022 年度 実施状況報告書

ランゲルハンス細胞および皮膚常在菌の同時制御による重症アトピー性皮膚炎治療の提案

研究課題

研究課題/領域番号 22K06779
研究機関明治薬科大学

研究代表者

松井 勝彦  明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20257140)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードアトピー性皮膚炎 / ランゲルハンス細胞 / 黄色ブドウ球菌 / ベタメタゾン / ジョサマイシン / テトラサイクリン / 表皮ブドウ球菌 / Th2免疫応答
研究実績の概要

ジョサマイシンおよびドキシサイクリンは、アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚病変部に常在する黄色ブドウ球菌の排除に加えて、表皮に局在するランゲルハンス細胞(LCs)の抗原提示能を制御する。本研究では、これらの抗生物質とステロイド薬のベタメタゾンを併用した外用療法に、表皮ブドウ球菌の皮膚移植を組み合わせることで、ステロイド薬単独での治療に抵抗性を示す重症ADの根治を目指した新たな治療戦略を臨床サイドに提案することを目的とした。
本研究目的を達成するためにNC/Ngaマウスに誘導した重症AD様皮膚病変に対して、ベタメタゾンとジョサマイシンまたはドキシサイクリンを組み合わせた2剤併用療法の治療効果を評価した。その結果、0.1% ベタメタゾンに0.1% ジョサマイシンを組み合わせた時の治療効果が最も優れていた。0.1% ベタメタゾンに0.1% ドキシサイクリンを組み合わせた時の治療効果は、急性炎症に対してはベタメタゾンとジョサマイシンの組み合わせに匹敵していたが、慢性期の炎症に対しては劣っていた。また、0.1% ベタメタゾンに3.0% テトラサイクリンを組み合わせた時の治療効果も、ベタメタゾンとドキシサイクリンの組み合わせ時と同じ挙動を示した。
続いて、重症ADに対する表皮ブドウ球菌移植の治療効果についてもその有効性を評価した。その結果、表皮ブドウ球菌の生菌を単独で移植した場合でも、急性期から慢性期にかけての皮膚炎に対して優れた治療効果を発揮することが明らかとなった。
以上の結果は、ステロイド薬単独ではコントロールできないほどの重症ADに対して、ベタメタゾンとジョサマイシンの2剤併用療法は優れた治療効果を発揮し、そこに表皮ブドウ球菌移植を組み入れることでADの根治を期待できる可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

試験予定のジョサマイシンまたはドキシサイクリンをベタメタゾンと組み合わせて2剤併用外用薬とし、NC/Ngaマウスの重症アトピー性皮膚炎 (AD)様皮膚病変への治療効果の判定を行った。その結果、ベタメタゾン単独または抗生物質単独よりもジョサマイシンとベタメタゾンの組み合わせが最も治療効果が高いことを確認した。また、実際の臨床現場で使用されているテトラサイクリン外用剤をベタメタゾン外用剤と組み合わせて用いても、その治療効果はジョサマイシンとベタメタゾンの組み合わせには及ばなかった。
次に、健常人の皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌の生菌を用いてNC/Ngaマウスの重症AD様皮膚病変への治療効果判定を行い、同菌の皮膚移植がAD治療に有効であることを確認した。
このように当初予定していた実験を全て完了し、一定の成果を得たことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。

今後の研究の推進方策

表皮ブドウ球菌の生菌とUV照射死菌を用いてNC/Ngaマウスの重症AD様皮膚病変への治療効果の比較検討を行い、同菌による最も効果的な皮膚移植法を確立する予定である。また、皮膚移植に用いる菌量や皮膚移植期間についても検討を加える予定である。
さらに、ベタメタゾンとジョサマイシンの2剤併用療法後に表皮ブドウ球菌の菌移植を組み入れた場合の治療効果についても検討を加え、最も治療効果が上がる条件を各治療期間も含めて明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of dual therapy with betamethasone and tetracycline in a NC/Nga mouse model of atopic dermatitis2023

    • 著者名/発表者名
      Matsui K, Kobayashi M, Nagano M, Matsuoka M
    • 雑誌名

      J. Pharm. Pharm. Sci.

      巻: 26 ページ: 11182

    • DOI

      10.3389/jpps.2023.11182

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Influence of the Th1 cytokine environment on CCL5 production from Langerhans cells2022

    • 著者名/発表者名
      Matsui K, Shibata R, Mogi K
    • 雑誌名

      Biol. Pharm. Bull.

      巻: 45 ページ: 491~496

    • DOI

      10.1248/bpb.b21-00985

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ベタメタゾン、ジョサマイシンおよびエメダスチンを用いたアトピー性皮膚炎の2剤併用療法2022

    • 著者名/発表者名
      松井勝彦
    • 雑誌名

      アレルギーの臨床

      巻: 42 ページ: 711~715

    • 査読あり
  • [学会発表] Effect of Th1 cytokine, IFN-γ on CCL5/RANTES production from Langerhans cells2023

    • 著者名/発表者名
      松井勝彦、茂木琴音、柴田里紗
    • 学会等名
      第96回 日本細菌学会総会
  • [学会発表] ランゲルハンス細胞のCCL5産生におけるTh1優勢環境の影響2023

    • 著者名/発表者名
      松井勝彦、茂木琴音、柴田里紗
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎様皮膚病変に対するベタメタゾンおよびテトラサイクリンの併用効果について2023

    • 著者名/発表者名
      米山絵里奈、小林真帆果、長野万里、松岡美央、松井勝彦
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] アトピー性皮膚炎に対する表皮ブドウ球菌移植における生菌および死菌の比較検討2023

    • 著者名/発表者名
      河津日向子、高久予理子、頼政圭杜、川口駿弥、松井勝彦
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎様皮膚病変に対するベタメタゾンおよびジョサマイシンを用いた2剤併用療法2023

    • 著者名/発表者名
      横山瑠菜、阿部友希乃、大浦真子、坂川由美、高岩弘稔、棚澤梨花、野口晃一、松井勝彦
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] Effects of josamycin on scratching behavior in NC/Nga mice with atopic dermatitis-like skin lesion2022

    • 著者名/発表者名
      松井勝彦
    • 学会等名
      第51回 日本免疫学会学術集会
  • [備考] 明治薬科大学/研究/研究室 教授:松井 勝彦(マツイ カツヒコ)

    • URL

      https://www.my-pharm.ac.jp/education/kdb/kyoin/kyoin_43.html

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公開日: 2023-12-25  

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