研究課題/領域番号 |
22K06787
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡辺 啓介 新潟大学, 医学部, 医学部准教授 (20446264)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 恐怖行動 / 細胞移動 / 脳・神経 / 発生・分化 / 解剖学 |
研究実績の概要 |
恐怖や不安には経験に基づかない先天的な行動があることから、その神経回路は遺伝子レベルで設計、構築されていることが予想される。しかしながら、その分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。私達は糖転移酵素Dpy19L1が恐怖・不安を制御する脳領域の発生を制御することで、生来の恐怖行動の発現に関与している可能性を見出した。そこで本研究では、Dpy19L1に注目することにより、生来の恐怖を制御する神経回路の形成を分子レベルで明らかにしていくことを目的としている。これまでの結果から、発生期大脳皮質 Dpy19L1が、海馬からの出力線維である脳弓形成を制御することで、遠く離れた後方中隔核の発生に間接的に関わっている可能性を考えられた。そこで本年度は、脳弓の出力元である海馬に異常が見られるのではないかと予想し、Dpy19L1 KOマウス海馬の発生異常について検討した。その結果、Dpy19L1 KOマウスにおいて顕著な海馬領域の縮小が認められた。海馬ニューロンマーカーのin situ hybridizationの結果、CA1-3および歯状回の構築には異常が認められなかった。また子宮内エレクトロポレーション法を用いて、Dpy19L1の下流候補分子を発生期大脳皮質に強制発現した結果、大脳皮質神経前駆細胞の増殖が亢進されることがわかった。これらの結果から、皮質Dpy19L1は海馬形成に深く関わっている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生期において、糖転移酵素Dpy19L1は海馬原基を含む大脳皮質に強く発現する(Watanabe et al., Development, 2011)。一方で、Dpy19L1 KOマウスは、大脳皮質から離れた後方中隔核の構築異常を示した。これまで両者の因果関係は全くわからなかった。今年度はKOマウスにおいて大脳皮質の一部の海馬で発生異常を見出すことができ、この異常が間接的に後方中隔核の構築異常に関わる可能性が高い。またDpy19L1の下流分子についても研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果から、Dpy19L1は海馬の発生に関わることがわかった。そこで、Dpy19L1が増殖や分化など、どのように海馬発生を制御しているかについて検討していく。またKOマウスにおける海馬形成異常が、間接的に後方中隔核形成や恐怖行動発現に関わっているかについて、コンディショナルマウスを解析することで明らかにしていく。また、RNAシークエンスにより、Dpy19L1シグナルについても網羅的な解析も実施する。
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