研究実績の概要 |
咀嚼は食物からエネルギー源となる栄養を体内へ取り込むために必須の生命活動であり、脳幹の咀嚼リズム発生ニューロンの機能により形成される。口腔・顎領域からの末梢感覚情報と大脳皮質咀嚼野から下降する中枢性情報は、咀嚼リズム発生ニューロンや脳幹の三叉神経プレモーターニューロンへ入力する。そして、三叉神経プレモーターニューロンが三叉神経運動ニューロンへ直接投射することで、筋の動作パターンが正確に生み出される。しかしながら、プレモーターニューロンの分化や機能を制御する分子機構は未だ不明である。そこで本研究では、「咀嚼神経回路形成と咀嚼運動の分子制御機構の解明」を目的とし、申請者が見出した三叉神経プレモーターニューロンに特異的に発現するSIX2転写因子の役割に焦点を当てる。 本年度は、SIX2陽性ニューロンの脳幹における細胞局在と性質の解明を目標とした。SIX2陽性ニューロンの特性を明らかにするために、脳幹や大脳において知られている各種ニューロンサブタイプマーカータンパク質(Phox2b, Atoh1, FoxP2, Tlx3, Satb2, CTIP2)との共局在様式を検討した。E14.5のr1-r2領域においてSIX2陽性細胞には、Phox2b陽性と陰性の2つの細胞集団が存在した。SIX2/Tlx3ニ重陽性細胞、SIX2/Satb2ニ重陽性細胞、およびSIX2/Ctip2ニ重陽性細胞は極めて少数であった。一方、SIX2/Atoh1ニ重陽性細胞とSIX2/FoxP2ニ重陽性細胞は存在しなかった。またE10.5では、SIX2陽性細胞のほとんどはPhox2b陽性であり、E14.5で観察された結果とは異なっていた。これらの結果から、SIX2陽性細胞の分化過程において、産生時期が異なる2つの集団が存在することが示唆された。
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