研究課題/領域番号 |
22K06797
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
沢登 祥史 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40525052)
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研究分担者 |
小川 覚之 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40436572)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胸腺 / 樹状細胞 / 線維芽細胞 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
以下の小項目番号は研究計画調書の研究実施計画に基づく。 「II-B: 線維芽細胞のトランスクリプトーム解析」に基づき、胸腺線維芽細胞の解析を行った。前年度までに、胸腺線維芽細胞の単離は困難であると判明していたが、本科研費予算で購入した試薬での細胞調製と、獨協医学教育研究財団研究助成金を用いてのシングルセル解析外注を合わせて、線維芽細胞を含む胸腺CD45陰性ストローマ細胞群を単離して解析を行い、解析結果から線維芽細胞データを抽出することにより胸腺線維芽細胞のトランスクリプトーム解析に成功した。一部の胸腺線維芽細胞と血管壁平滑筋細胞は互いに似た遺伝子発現を示したため、免疫染色を組み合わせた峻別が必要となった。胸腺線維芽細胞は5つの亜集団に分かれたが、そのうち末梢抗原を強く発現する集団が上皮細胞欠損領域に局在することが明らかとなり、上皮細胞欠損領域の免疫寛容プラットフォームとしての役割が裏付けられた。
「III: mEFAに対する介入実験によるvalidation」に基づき、前年度までに存在が明らかとなっていたCD103陰性新規DC候補細胞のキャラクタリゼーションと機能の探索を行った。CD103陰性新規DC候補細胞は、古典的DCのうちcDC2に類似した。また、マクロファージの機能分子を一部発現したためマクロファージとのトランスクリプトーム比較も行ったが、マクロファージではないという結論を得た。 直接胸腺に対する介入実験を行うことは困難であったため、in vitroでの混合白血球培養と再凝集胸腺組織培養を用いて検討した。その結果、CD103陰性新規DC候補細胞は、末梢T細胞に対しては古典的樹状細胞に比べて強い分裂を誘導し、胸腺のT前駆細胞に対しては強化された負の選択や制御性T細胞の抑制を行うことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に書かれた「I-B: 質量顕微鏡によるmEFAの低分子マッピング」や、「II-A: mEFA細胞群のプロテオミクス解析」は、得られた情報の少なさや、細胞の単離の難しさにより、予定通りには進んでいないが、CD103陰性新規DC候補細胞の発見、トランスクリプトーム解析、in vitroアッセイでの機能試験や、線維芽細胞のシングルセル解析では多くのポジティブな結果が得られており、予定通りに進まなかった点を十二分に代替している。本年度中に2本の論文を投稿できる見込みであり、ラットのみならずヒトやマウスにも共通する胸腺機能の新たな知見が得られているため、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初、本研究において、研究代表者は、予備検討で見られていたmEFAに局在するMHCII陽性細胞を探索していた。結果として現状、CD103陰性新規DCサブセットを発見しているが、免疫組織化学で利用できる抗体の不足により、これがmEFAに局在する証拠はいまだ得られていない。そこで、このサブセットに特異的に発現するフィコリンBに対する新規抗体を作成し、免疫染色によりこのサブセットの局在を確認する。
胸腺線維芽細胞の解析では、これまでにFb1-4の4種類の線維芽細胞を同定し、Fb3および4に関しては抗PDGFRb抗体を用いてmEFAに局在することを確認しているが、Fb1及び2の局在は未だ不明である。トランスクリプトームデータからマーカー遺伝子を特定し、免疫染色によりFb1および2の局在を確かめたい。
その他、これまでに行った実験の条件(動物の週齢等)の統一や、検体数の増強のための再実験を行い、本年度中にCD103陰性新規DCサブセットおよび胸腺線維芽細胞に関する知見を、それぞれ論文にまとめ投稿したい。
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