研究課題/領域番号 |
22K06815
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
山岸 敏之 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (60255122)
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研究分担者 |
甲斐 理武 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30572573)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心臓 / 刺激伝導系 / ゼブラフィッシュ / HCN4 |
研究実績の概要 |
心臓の発生・分化における刺激伝導系の細胞系譜とその運命決定のメカニズムはいまだ不明である。ゼブラフィッシュは、遺伝子操作が容易であり、胚が透明であることから、生きたまま臓器の観察が容易に行える。これらは、細胞系譜の追跡や細胞レベルでの発現遺伝子の解析を空間的、また経時的に解析するのに適している。そこで本研究では、刺激伝導系細胞の成り立ちを分子の言葉で理解するため、ゼブラフィッシュを用いて心臓発生過程の遺伝子発現アトラスを作成し、その成り立ちを網羅的に解析することを試みている。魚類の刺激伝導系の存在は不明であったが、私たちはゼブラフィッシュの成魚心臓領域に刺激伝導系マーカー(HCN4)陽性細胞が存在することを見出した。本年度は、成体の心臓におけるHCN4抗体陽性細胞の局在を詳細に調べた。ゼブラフィッシュ心臓を未固定で凍結した後、連続凍結切片を作成し、HCN4抗体を用いて蛍光免疫組織化学法を行った。その結果、心臓から静脈洞の領域に存在する弁様構造の内部に強い陽性反応が見られた。この領域には内皮細胞、心筋細胞、心外膜が存在する。そこでHCN4陽性細胞がどの領域に存在するのかを明らかにするため、心筋細胞のマーカーとしてα-actinin抗体を用いて心筋細胞の位置を明らかにし、HCN4抗体陽性細胞の局在と比較した。その結果、HCN4陽性細胞は心筋細胞と一部重なって局在することが明らかになった。このことは、ゼブラフィッシュ刺激伝導系細胞が静脈洞に近い心房領域の心筋領域に存在する可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、所属機関主催の全国学術集会の開催及びその準備を行ったが、新型コロナ感染拡大により、対面とオンラインの同時開催に急遽変更するなど、予想していた以上に学会開催準備に時間をとられた。その結果、予定していた組み換え動物作成のためのHCN4遺伝子発現に関する分子レベルでの実験が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は遅れているHCN4遺伝子発現の分子レベルでの解析をすすめるとともに、組み換え動物作成のための基礎実験を進める。また、当初計画していたようにHCN4以外の刺激伝導系マーカー(tbx3など)についても、魚類心臓での解析を試みる。HCN4と同様に本研究に利用可能と判断できた場合には、新規の刺激伝導系マーカーとしてその発現などを分子レベルで解析を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施できなかったHCN4遺伝子発現の分子レベルでの解析を、来年度に行う費用として使用する予定である。さらに当初予定していたHCN4陽性細胞の形態的な観察と同時に、遺伝子解析を行う。また、HCN4以外のHCN4以外の刺激伝導系マーカー(tbx3など)についても解析を試みる。
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