研究課題/領域番号 |
22K06821
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
関 亮平 関西医科大学, 医学部, 助教 (40746624)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有尾両生類 / 脊髄 / 再生 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
哺乳類の脊髄損傷後の神経機能再生を妨げる要因の一つに、損傷部位に形成される瘢痕が挙げられる。瘢痕が形成されると軸索が損傷部位を通り抜けて再伸長することができなくなり、神経回路が遮断されたままとなる。ところが、イモリを含む有尾両生類では、脊髄損傷後に自発的な組織再構築が起こり、軸索の再生を経てほぼ完全な神経機能が再建される。本研究では、有尾両生類が持つこの特異な再生能力のメカニズムを、免疫系が果たす役割に着目して明らかにすることを目的とする。 当該年度は、イモリ脊髄再生時における免疫細胞やリンパ管新生の動態を明らかにするための前段階として、それらの細胞・構造を可視化する手法の確立に取り組んだ。免疫細胞の可視化については、T細胞やマクロファージに対する特異的抗体を購入し、イベリアトゲイモリに対する交差性の検証から着手した。両生類での使用実績のある抗体を選定したものの、明瞭な交差性が確認できなかったものもあったため、固定方法の最適化や抗原賦活化も含め、染色方法の検討を進めている。リンパ管の可視化に関しては、先行研究を参考に、リンパ管内皮細胞マーカーであるProx1とLyve1の検出を目指した。イベリアトゲイモリに交差性のあると期待される市販抗体がなかったことから、免疫染色ではなくin situ hybridizationによるmRNAの可視化を行うこととした。Prox1はイモリcDNAよりクローニングできたものの、Lyve1に関しては配列情報がなくdegenerate primerによる増幅を試みているところである。次年度は、まず上記の実験項目を速やかに完了させ、脊髄損傷前後で免疫細胞の細胞数の変化やリンパ管新生の様子を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
免疫染色のプロトコルの確立に時間を要したことが遅れの主な原因である。まずスタンダードなプロトコルや既報論文の手法に従って実施したが明瞭な染色像が得られなかったため、脊髄に加え免疫細胞が豊富な脾臓を用いてプロトコルの改善を実施することとなった。Lyve1のクローンングにも時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、免疫染色に使用できる抗体の選定(もしくは染色方法の改善)を早急に完了させる。だたし、あまりにも時間を要するようであれば途中で見切りをつけ、既に交差性が確認できている抗体を用いて、予定していた解析を遂行する。リンパ管の可視化についても同様に、Lyve1のクローニングが不可能であればまずはProx1のみを用いて研究を前進させる。まずは、脊髄損傷後の免疫細胞の浸潤数の増減やリンパ管新生の様子を明らかにすることで、これらの細胞・組織が脊髄再生へ関与する可能性を検証する。 脊髄損傷後に浸潤数が増加するような免疫細胞は、脊髄再生に何らかのかたちで寄与している可能性がある。そこで次に、当該細胞を除去した場合に脊髄再生にどのような影響が及ぶかを解析することで、重要な役割を果たす免疫細胞を特定する。免疫細胞の除去は、免疫染色に用いた抗体を脊髄切断前の生体に投与することで行う。免疫染色により当該細胞が除去されたことを確認した後に、損傷部位に瘢痕が形成されるか、そして軸索伸長が阻害されるかをこれらのマーカータンパク質に対する免疫染色により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イベリアトゲイモリに交差性を示す抗体の選別に想定以上の時間を要したことが主たる要因である。これにより当初の計画通りに研究を進めることができず、予算執行が滞った。次年度は、抗体の選定を早急に完了させた上で、脊髄損傷前後で免疫細胞の浸潤状態を比較する予定である。さらに、脊髄再生への関与が想定される免疫細胞をイモリから除去し、その影響を評価することを計画している。次年度予算は、免疫細胞の可視化と除去のいずれにも必要な抗体や組織染色用試薬等の消耗品の購入、動物の購入と維持、学会参加のための旅費に当てる。
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備考 |
researchmap https://researchmap.jp/SEKI-R_CV
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