研究課題
骨格筋の興奮収縮連関は、細胞膜上のL型Ca2+チャネルと、筋小胞体膜上のリアノジン受容体が協調することで引き起こされる。L型Ca2+チャネルとリアノジン受容体が共局在することは,電気信号をカルシウム信号に変換するために必須であり、その異常は致死的である。これらの分子が近接する「場」を結合膜と呼び、ジャンクトフィリン(JP)はこの構造を維持する分子である。成熟した骨格筋にはJP1およびJP2の二つのサブタイプが発現しているが、これらの機能的差異の詳細は明らかになっていない。そこで、骨格筋の興奮収縮連関におけるJP1とJP2の生理学的役割を、サブタイプ別に明らかにすることを目的に研究を行った。解析にはCASAAV法を用いることとした。本法では、Cre依存的にCas9-GFPを発現するトランスジェニックマウス(Flox-Cas9-GFPマウス)に、Cre配列と目的遺伝子に対するgRNAを発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を投与する。この方法により、特定組織の遺伝子のみを欠損させうることが報告されている。そこで、AAVにJP1、JP2の遺伝子を標的としたgRNAを組み込み、これを成獣Flox-Cas9-GFPマウスの前脛骨筋および短趾屈筋に注射した。しかし、感染4週間後に前脛骨筋の収縮力を測定したところ、有意な変化は認められなかった。さらにJP1、JP2のウェスタンブロッティングを行ったところ、十分な発現量の減少が認められなかった。このことから、本条件では解析が困難であることが明らかとなった。現在、より高い遺伝子欠損効率を達成するため、AAVの投与量およびgRNA配列の最適化を行っている。
3: やや遅れている
本年度中にJP1およびJP2の組織特異的ノックダウンを達成する予定であったが、これまでの条件検討では十分な効果が得られなかった。そのため、表現型の解析に進めておらず、進捗が予定よりやや遅れてしまった。
現在、より高い遺伝子欠損効率を達成するため、AAVの投与量およびgRNA配列の最適化を行っており、これが達成され次第、生理学的、分子生物学的解析を進める。また,これまでの報告では、成獣と比較して新生仔期の遺伝子欠損効率が高いとされているため、投与時期についても検討を行う。
目的の遺伝子欠損マウスの作製が遅れ、その後に行う実験で使用予定だった試薬を購入しなかったため。
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J Gen Physiol.
巻: 154 ページ: e202213230
10.1085/jgp.202213230