研究課題/領域番号 |
22K06831
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (10304677)
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研究分担者 |
村田 芳博 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (40377031)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電気生理学 / 鋤鼻系 / シグナル伝達 / 相反性シナプス |
研究実績の概要 |
僧帽細胞に脱分極刺激を与えると、上記相反性シナプス由来の抑制性シナプス後電流(IPSC)が生じる。この相反性シナプス伝達は、僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達と、顆粒細胞から僧帽細胞へのGABA作動性シナプス伝達の両方を含んでいる。バソプレシンの作用についてより正確な知見を得るためには、片方ずつ分離して調べる必要がある。そこで今年度は、顆粒細胞から僧帽細胞へのGABA作動性シナプス伝達に対するバゾプレシンの作用点がシナプス前機構か後機構によるのかの特定をさらに進めた。 今年度は、シナプス前機構を介する仕組みの中で広く受け入れられている機構である、シナプス前細胞(顆粒細胞)のCa2+電流の修飾について引き続き調べた。 顆粒細胞のCa2+電流測定の例数をさらに増やし、電位依存性特性解析を継続した。この結果、高閾値型電位依存性タイプのCa2+コンダクタンスがバソプレシンによって有意に抑制されることを、昨年度よりもさらに広い範囲の刺激電位において明らかにした。本研究で測定している顆粒細胞に発生する電位依存性コンダクタンスは低閾値型および高閾値型電位依存性Ca2+チャネル阻害薬のNi2+およびCd2+存在下ではほぼ完全に消失したことから、Ca2+コンダクタンス以外の他のコンダクタンス(Cl-コンダクタンス等)が本研究で注目しているGABA作動性シナプス伝達の前機構に寄与しないことも明らかにした。 また、上記相反性シナプス電流に対するバソプレシンの抑制作用を多角的に捉えるため、プレリーハタネズミ(一夫一婦型齧歯類)を用いて、研究対象細胞の僧帽細胞からの相反性シナプス電流の測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、バゾプレシンの、細胞レベルでの作用(具体的には相反性シナプス電流に対する作用点)をさらに調べることを目標とした。上記相反性シナプス電流に対する抑制作用に関わっているバゾプレシンの作用点について、顆粒細胞から僧帽細胞へのGABA作動性シナプス伝達に関する新たな知見が得られた。今年度の知見も、シナプス前側の詳細な記録・解析から得られた成果である。今年度はさらに記録成功例が増えたことにより、前年度では有意差が得られなかった刺激電位においても有意差が検出できた。フェロモン記憶に必須である上記相反性シナプス伝達の特性に関する従来の知見を着実に発展させるものである。 また、上記相反性シナプス電流に対するバソプレシンの抑制作用を多角的に捉えるため、プレリーハタネズミ(一夫一婦型齧歯類)を用いて、研究対象細胞の僧帽細胞からの相反性シナプス電流の記録に成功し、今後の実験発展の出発点となる応答記録が出来た。 以上から、当該研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 相反性シナプス電流に対するバゾプレシン受容体の作用…当該年度は、相反性シナプス電流に対するバゾプレシンの作用点のうち、顆粒細胞から僧帽細胞へのGABA作動性シナプス伝達について、特にシナプス前機構への作用について調べ、バゾプレシンの細胞外投与により抑制される顆粒細胞のCa2+電流がどのタイプのものか明らかにした。 本研究対象の相反性シナプス伝達は、僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達と、顆粒細胞から僧帽細胞へのGABA作動性シナプス伝達の両方を含んでいる。今年度までの研究により、バソプレシンのGABA作動性シナプス伝達に対する作用を明らかにしたので、次年度以降は僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達について調べる。
(2) 一夫一婦型齧歯類の相反性シナプス伝達に対するバゾプレシンの作用…研究代表者が見出した、マウスフェロモン記憶に重要な役割を果たしている副嗅球相反性シナプス伝達に対するバゾプレッシンの抑制作用を多角的に捉えるため、プレリーハタネズミ(一夫一婦型齧歯類)を用いて上記相反性シナプス電流に対するバゾプレシンの作用を調べ、これまで得られたマウス(乱交型齧歯類)の結果と比較する。 予備実験において、プレリーハタネズミ副嗅球スライス標本はマウス標本に比べて健康な細胞を含むスライスを得るのが困難であることを見出している。本年度にプレリーハタネズミ副嗅球スライスからの相反性電流の測定を試み、極めて弱い応答ながら記録に成功した。今後はスライス作製条件を改良し、解析可能なレベルの相反性シナプス電流を測定しバソプレシンの作用を調べる。これにより将来的には、我々がマウスで見出した相反性シナプス伝達に対するバソプレシンの抑制作用が、プレリーハタネズミにおいても見られるのか、抑制の程度はマウスより強いのか弱いのかといった点について調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
シナプス前機構にバソプレシンが影響を及ぼす機能分子として、初めに着目したCa2+チャネルに対しては、実際にバソプレシンが効果を有することを見出し、その阻害薬を用いての解析を行ってきた。この結果を受けて購入予定だった他の候補分子に対する阻害薬および作動薬を使用する計画であったが、実験装置の設置してある建物が断続的に震動が発生する大規模修繕工事が継続中のために実験不可能な時期が断続的にあったことにより、使用する薬物量および記録測定に使う電極の使用量が減少したため、経費の節約につながった。また、測定・解析機器類の一定頻度で生じる故障に備えた修理代・維持費を計上していたが、使用時に細心の注意を払って使用した為、今年度はその必要が余りなかったことも経費の節約につながった。 以上の理由から次年度使用額が生じた。 ・設備備品費として25万円を計上。電気生理測定・解析機器の購入代、修理代、維持費に用いる。薬品は、41万円を計上。バソプレッシン抗体、各種Ca2+チャネル阻害薬および作動薬など、を購入する。実験動物は、11万円を計上。購入費および飼育代として妥当かつ必要な額を使用する。実験器具は、7万円を計上。ガラス器具、スライス作成時の刃やメスの替え刃の購入に充てる。論文別刷りは、5万円を計上した。旅費等は25万円を計上した。次年度に開催される学会での研究成果発表に使用予定である。
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