研究課題/領域番号 |
22K06843
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
石橋 賢 浜松医科大学, 医学部, 助教 (90832189)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オレキシン / sAHP / 非選択的陽イオンチャネル |
研究実績の概要 |
本研究は、背側縫線核セロトニン作動性ニューロンにおいてオレキシンが誘発する発火後過分極増強(oeAHP)のうちカルシウム感受性カリウムチャネルの阻害薬であるアパミンに非感受性な成分(ai-oeAHP)が発火活動特性に及ぼす細胞機能的な影響を明らかにすることを目的とする。令和5年度は、脳スライス標本に対する電気生理学的手法を用いた薬理学実験によりai-oeAHPの発現に関わるイオンチャネルの同定についてさらに解析を行った。これまでの研究結果により非選択的陽イオンチャネルがオレキシンの作用に関与していることを示唆するデータが得られているため、さらに選択性が高い阻害薬による検討をしたところ、以下の進展がみられた。 Transient receptor potential(TRP)チャネルのうちTRPC4/5を選択的に阻害するM084は、ai-oeAHPの振幅に有意な影響を及ぼさなかったのに対して、オレキシン誘発性内向き電流の振幅をわずかに減少させた。さらに、デルタ型グルタミン酸受容体の阻害薬である1-Naphthylacetyl spermine (Naspm)は、オレキシン誘発性内向き電流とai-oeAHPの両方を大きく抑制した。これらの結果から、オレキシン受容体の活性化は、主にデルタ型グルタミン酸受容体を活性化することで脱分極を引き起こし、脱分極によって引き起こされる発火活動によって細胞内に流入したカルシウムにより、このデルタ型グルタミン酸受容体が一過性に抑制されることでai-oeAHPが発現していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に計画していた電気生理学的手法を用いた薬理学実験により、オレキシンがデルタ型グルタミン酸受容体を活性化することが明らかになったことから、全体としておおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンにおいて、オレキシンがイオンチャネル型グルタミン酸受容体ファミリーに属すデルタ型グルタミン酸受容体を活性化することで脱分極を引き起こすことを明らかにした。しかし、発火活動により活性化される電位依存性カルシウムチャネルを介した細胞内へのカルシウム流入がデルタ型グルタミン酸受容体を抑制する機序について明らかになっていないため、さらに解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも購入した薬剤が少なかったため予算が残ったが、次年度の薬剤購入に使用する。
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