研究課題/領域番号 |
22K06853
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平山 友里 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30732804)
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研究分担者 |
安西 尚彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70276054)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 虚血耐性 / アストロサイト / 乳酸 |
研究実績の概要 |
虚血耐性とは、先行して非侵襲的な短時間虚血(preconditioning; PC)を経験することにより、その後の侵襲的な長時間虚血に対する抵抗性を獲得する現象である。我々はこれまでに、アストロサイトがPCによって活性化し、ATP受容体であるP2X7受容体を発現亢進することで脳虚血耐性を誘導することを明らかにしてきた。しかし、P2X7受容体の下流のメカニズムについては不明であった。我々は、脳虚血耐性による保護作用にはアストロサイトP2X7受容体依存的な乳酸放出が関与していることを明らかにした。中大脳動脈閉塞の手技にてマウス一過性脳虚血モデルを作製し、長時間虚血(1時間虚血)中の細胞外乳酸濃度をマイクロダイアリシス法を用いて測定したところ、PC(15分間虚血)を予め負荷した野生型マウスはPCなしの場合と比較して有意に細胞外乳酸濃度が上昇していた。しかし、その現象はP2X7受容体欠損マウスでは見られなかった。また、乳酸の脳室内投与は1時間虚血により惹起される脳梗塞体積を顕著に縮小させることもわかった。PC後の活性化アストロサイトでは、乳酸放出に関与する輸送体MCT1、MCT4、それら輸送体のシャペロンであるCD147の発現が増加していた。次に、それら分子の発現はP2X7受容体依存的かどうかを調べるために、アストロサイト初代培養系を用いたin vitro実験を行った。その結果、P2X7受容体活性化はCD147発現を亢進し、CD147依存的にMCT1とMCT4の膜発現を促進することが明らかとなった。さらに、PCによる1時間虚血中の細胞外乳酸濃度上昇はCD147中和抗体の投与により抑制され、虚血耐性効果も見られなかった。従って本研究により、アストロサイトはP2X7受容体依存的な乳酸放出により虚血耐性を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
論文が受理された後は、脳虚血モデルにおけるアストロサイト乳酸放出の詳細な分子メカニズム解析を行う予定である。
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