研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、循環調節作用を有する生理活性ペプチドであり、脂肪細胞の分化、および糖脂質、エネルギー代謝を制御していることを明らかとしてきたが、アドレノメデュリン2(AM2)の代謝制御における意義は明らかでない。本研究では、AM2ノックアウトマウス、およびAM2の受容体活性調節タンパクRAMP3のノックアウトマウスを用いて、代謝制御におけるAMとAM2の機能分化と相互作用、およびメタボリックシンドロームから肝癌発症における病態生理学的意義を解明し、AMとAM2が新たな治療標的になるか検討することを目的とした。令和4年度は、AM、AM2の肝癌発症における役割を解明するために、肝癌モデルを作成し、検討を行った。肝癌モデルとして、ジエチルニトロサミン(DEN)と高脂肪食投与による原発性肝癌モデルを作成し、肝臓の腫瘍部、非腫瘍部での遺伝子発現の解析を行った。このモデルにおいて、腫瘍部では、非腫瘍部と比較してAM2の発現が増加したが、一方AMの発現に大きな変化は見られなかった。また、AM、AM2の受容体活性調節タンパクの一つであるRAMP3の発現が腫瘍部で増加することが確認された。肝臓における腫瘍の発生にAM2およびRAMP3が関与することが示唆され、さらに詳細に解析することにより、AM、AM2の機能分化と相互作用、およびメタボリックシンドロームから肝癌発症における機能制御が明らかになると考える。
2: おおむね順調に進展している
AM2の肝癌発症における役割を解明するために、肝癌モデルを作成し、検討を行った。ジエチルニトロサミン(DEN)と高脂肪食投与による原発性肝癌モデルを作成し、肝臓の腫瘍部、非腫瘍部の解析を行い、腫瘍部において、非腫瘍部と比較してAM2とRAMP3が増加することを明らかにした。以上の結果より、AM2がメタボリックシンドロームから肝癌発症における治療の有用な標的となることが示唆された。当初の研究実施計画より少し遅れているが、おおむね順調に進展している。
令和5年度は、原発性肝癌モデルの解析を引き続き行う。さらに、AM2ノックアウトマウス、RAMP3ノックアウトマウスを用いて肝癌モデルの解析を行い、AM2の代謝制御、およびメタボリックシンドロームから肝癌発症における機能制御をより詳細に解明する。
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メディカル・サイエンス・ダイジェスト
巻: 48(6) ページ: 38-40
Biology(Basel)
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