研究課題/領域番号 |
22K06858
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
足立 直子 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (70604510)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | パルミトイル化修飾 / ニトロシル化修飾 |
研究実績の概要 |
パルミトイル化修飾は、タンパク質の局在や機能を制御する極めて重要な翻訳後脂質修飾である。本研究では、一酸化窒素(NO)がパルミトイル化修飾酵素DHHCタンパク質の生理的な活性抑制因子であることを示す、つまり、NOの下流で基質タンパク質のパルミトイル化修飾が低下し、関連するシグナル伝達経路の応答が変化することを証明する。NOによるDHHC酵素の不活性化メカニズムを解明し、パルミトイル化修飾低下による細胞・臓器の機能変化を明らかにする。更に、敗血症の病態進行に関与するDHHC酵素を同定し、NOによるパルミトイル化修飾の制御がどのように敗血症の進行に関与するかを検討する。最終目標として、敗血症のみならず、NO関連疾患の発症機序への理解を深め、今後の新規治療薬・治療方法の開発への発展を目指している。 本年度は提唱した3つの目標の内、①NOによるDHHC酵素活性低下メカニズムの解析、②マクロファージにおけるパルミトイル化修飾抑制が及ぼす機能変化の解明、の二つについて研究を推進した。NO産生モデルとして、マクロファージ培養細胞であるRAW264.7細胞と、マウス由来初代培養活性化マクロファージを用いて細胞レベルでの解析を行った。まず、NOによるDHHC酵素内のS-ニトロシル化修飾をSNO-RAC法により同定した。また、長期的NO暴露によるDHHC酵素の分解を確認した。加えて、NO産生マクロファージ細胞では、DHHC酵素のみならず、脱パルミトイル化酵素LYPLAやABHDsの機能阻害を引き起こし、パルミトイル化ー脱パルミトイル化サイクル自体の低下を引き起こすことを明らかにした。現在、他のパルミトイル化修飾の標的タンパク質が、どのように、マクロファージの機能に関与するのかについて、検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は目標3つの内、2つについて研究を進め、NOによるパルミトイル化修飾抑制効果が、パルミトイル化修飾責任酵素のみならず、脱パルミトイル化酵素にまで及ぶことを証明した。これにより、パルミトイル化・脱パルミトイル化のサイクル自体が低下し、可逆的なパルミトイル化修飾自体が停止することが判明した。これは、パルミトイル化修飾による細胞質/膜への局在変化や、タンパク質の構造変化、輸送変化等が全て停止、固定化していることを意味し、細胞機能に与える影響は大変大きい。今後は、NOによるパルミトイル化修飾の固定化がマクロファージに与える影響に着目し、研究を推進する。
|
今後の研究の推進方策 |
NO産生マクロファージを用いて、質量分析を行うことで、影響を受けるパルミトイル化タンパク質を同定を行う。また、脱パルミトイル化酵素がどのようにニトロシル化修飾によって制御されるのかについて、メカニズムの解析を行い、詳細な制御機構を明らかにする。加えて、目標3つ目の、「敗血症におけるパルミトイル化修飾タンパク質の変動が寄与する病態変化の解明」について、マウスを用いた個体レベルでの解析を始める。現在、敗血症の発症モデルの作製条件を検討しており、条件が決まり次第、マウス腹腔内よりマクロファージを採取と解析、また、iNOSの発現が有意に上昇する臓器の同定、これらを用いたDHHC酵素の活性化状態、発現量、パルミトイル化修飾タンパク質量の変化を観察し、NOが生体内においてDHHC酵素の生理的抑制因子であることを証明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降より、マウスを用いた個体レベルの解析をスタートすることから、本年度より経費がかかるみこみであることから、次年度以降へ予算を残した。
|