研究課題/領域番号 |
22K06860
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
市原 克則 鳥取大学, 医学部, 助教 (50710711)
|
研究分担者 |
長田 佳子 鳥取大学, 医学部, 講師 (50304209)
大倉 毅 鳥取大学, 医学部, 講師 (80510073)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肥満 |
研究実績の概要 |
肥満および糖尿病患者は増加の一途を辿っている。肥満・糖尿病病態の基盤として、摂食の抑制・エネルギー代謝消費の増加に関与するホルモンであるインスリン・レプチンの、代謝・内分泌の中枢である脳内部位視床下部での作用不全(インスリン抵抗性、レプチン抵抗性)と、それに伴う末梢インスリン標的組織でのインスリン抵抗性が存在する。申請者はこれまでに、視床下部のニューロンにおけるインスリンおよびレプチンシグナルが食欲を制御する機構について、インスリンシグナルの抑制因子に注目して報告してきた。また、ニューロンの周囲にはニューロンの正常な機能をサポートするグリア細胞が多数存在している。グリア細胞の中でも髄鞘形成細胞であるシュワン細胞およびオリゴデンドロサイトは跳躍伝導の様な神経構造的なサポートだけでなく、神経細胞への栄養やホルモンなどの機能的なサポートもおこなっている。 糖尿病患者において、末梢神経での神経軸索の変性に加え、髄鞘形成細胞であるシュワン細胞の機能異常やアポトーシスが報告されており、末梢神経系での髄鞘の変化は糖尿病の3大合併症の1つである糖尿病性神経障害の病態の一部と考えられる。しかし一方、中枢神経系での髄鞘異常が肥満・糖尿病病態基盤と考えられるインスリン・レプチン抵抗性に関与するか、またその機序は未解明である。 そこで、中枢神経系での髄鞘異常がレプチン抵抗性に関与するかを解明するために、実験動物を用いて脱髄を誘導し、中枢神経性のレプチン作用を評価した。例数が不十分であるものの、薬剤誘導性脱髄モデルマウスにおいて、レプチン抵抗性の可能性を示唆する予備的な知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中枢神経系での髄鞘異常が肥満・糖尿病病態基盤と考えられるレプチン抵抗性に関与するかを解明するために、実験動物を用いて脱髄を誘導し、中枢神経性のレプチン作用を評価した。例数が不十分であるものの、薬剤誘導性脱髄モデルマウスにおいて、レプチンの脳室内投与による摂食抑制効果が減弱する予備的な知見を得た。これは中枢神経系での脱髄が、レプチン抵抗性を誘導する可能性を示唆するものであり、本研究課題の最も核心となる仮説を支持するデータである。その一方、肥満・糖尿病モデルの視床下部において髄鞘異常と髄鞘関連分子の変化を検出し、肥満・糖尿病モデルにおける髄鞘異常進展の分子メカニズムを推定する予定であったものの、検討は十分には進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
中枢神経系での髄鞘異常が肥満・糖尿病病態基盤と考えられるレプチン抵抗性に関与するかを解明するために、実験動物を用いて薬剤で脱髄を誘導し、中枢神経性のレプチン作用を評価した。その結果、中枢神経系での脱髄がレプチン抵抗性を誘導する可能性を示唆する、本研究課題の最も核心となる仮説を支持する予備的なデータを得たが、例数が不十分であり、さらに詳細に検討を進める予定である。さらに、Primaryな異常として髄鞘の破壊をきたす遺伝子改変マウスを導入し、本研究の仮説を立証する予定である。 さらに、肥満・糖尿病モデルの視床下部において髄鞘異常と髄鞘関連分子の変化を検出し、肥満・糖尿病モデルにおける髄鞘異常進展の分子メカニズムの解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
中枢神経系での脱髄がレプチン抵抗性を誘導する可能性を示す知見を得るために、まず初めに薬剤誘導性の脱髄モデルを用いて検討を進めた。仮説を支持する可能性を示す知見を得ているものの、予備的な結果にとどまっている。そこで、当初の予定では髄鞘の破壊が可能な遺伝子改変マウスを本年度に導入する予定であったが、薬剤性脱髄モデルを解析するために、当初予定していた遺伝子改変マウスの購入を一旦保留し、次年度使用額が生じた。 次年度には、薬剤誘導性脱髄モデルの解析を進めつつ、遺伝子改変マウスの導入と解析を進めるために、本費用を使用する計画である。
|