研究実績の概要 |
アミノ酸は生体にとって必要な栄養素であるが、特に必須アミノ酸の1つであるロイシンは、細胞増殖のシグナル伝達に重要な役割を果たしている。細胞内に流入したロイシンは、mTOR系を活性化し、細胞増殖を増加させる。申請者らは、腎臓における嚢胞形成が特徴である常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)やそのモデルマウスにおいて、腎嚢胞形成部位にこのアミノ酸トランスポーターLAT1が高発現することを見出した。さらに、ADPKDモデルマウスにロイシンを含むBCAA 分岐鎖アミノ酸を投与すると、腎嚢胞の形成が促進されることを報告した。 ADPKD患者は腎嚢胞だけでなく肝嚢胞を併発する場合が多く、ADPKDモデルマウスにおいても肝嚢胞を形成する。この肝嚢胞の形成は、腎嚢胞と同様にBCAA投与で悪化するが、肝嚢胞にLAT1の発現は見られなかった。BCAA投与により肝嚢胞も悪化することから、ある種のアミノ酸輸送体が関与するはずである。さらに解析を進めた所、多くのアミノ酸輸送体と共有結合を形成し、その細胞膜表面での機能発現を補助する4F2hcの発現が確認できた。4F2hcはLAT1のみならず、LAT2, y+LAT1, y+LAT2, Asc-1, xCTといったアミノ酸輸送体の補助サブユニットとして働く。そこで、これらアミノ酸輸送体の抗体を用いて免疫染色を行ったところ、嚢胞に発現する輸送体をいくつか同定できた。
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