研究課題/領域番号 |
22K06869
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
酒井 寛泰 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (00328923)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シスプラチン / 筋萎縮 / miRNA |
研究実績の概要 |
がん化学療法中には、疲労感/倦怠感を 7 割以上の患者が体験すると言われているが、詳細な機序は未だに不明である。申請者は、これまで、この疲労感/倦怠感の発症メカニズム解明の一つとして、抗がん薬が骨格筋組織に与える負の影響があるという仮説を立て、抗がん薬投与時の骨格筋組織への影響を検討してきた。また、がん患者では骨格筋量が予後と相関すること、がん化学療法により骨格筋量が減少すること、その程度が大きい症例では治療が継続できないことが知られている。 申請者はこれまでに、多くのがん腫治療に使用されるシスプラチンが骨格筋萎縮を引き起こし、がん患者の予後不良因子となることを示唆したが、その発症機序は十分に理解されておらず、解明すべき課題である。申請者らは先行研究 (15K18880 および18K06706) において、シスプラチンの筋萎縮発症時の骨格筋において IGF-1 の発現量が著明に減少し、さらにIGF-1 をターゲットとするmiR-29-3p family が有意に発現上昇することを見いだした。しかし、これらの発現制御が、筋萎縮の発症機序において因果関係で結ばれるか否かについては未だ明らかになっていないため、IGF-1以外のmiR-29-3p familyのターゲットである Col1a1、Col1a2、Col3a1、Col5a1、Col5a2、Col4a1の遺伝子発現をシスプラチン投与マウスおよびシスプラチン処置のC2C12筋管細胞で検討した。その結果、シスプラチン投与による筋萎縮時ならびにシスプラチン処置のC2C12筋管細胞にはおいて、procollagen 遺伝子であるCol1a1、Col1a2、Col3a1、Col4a1、Col5a1 および Col5a2遺伝子の有意な発現抑制が引き起こされていた。したがって、IGF-1以外のmiR-29-3p family のターゲットもシスプラチンによって発現がコントロールされている可能性が示唆され、シスプラチンによる筋萎縮時のmiR-29-3p familyの発現上昇の機能的意義や病態生理学的意義が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画であったmiR-29a/b/c-3p の miRNA inhibitor およびコントロールを transfection Reagent を使用して細胞へ導入し、シスプラチン処置後、筋管細胞の直径を比較検討する予定であったが、これらのmiRNA inhibitor の処置スケジュールを検討中であるため、未だこれらの結果が出ていないため、予定していた年次計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
C2C12筋管細胞へのmiRNA inhibitor の処置スケジュールが決定次第、同時にmiR-29a/b/c-3p の それぞれ mNA mimic およびコントロールを transfection Reagent にて細胞へ導入し、シスプラチン処置後、筋管細胞の直径を比較検討すると同時に IGF-1 などの発現変動を解析する予定である。その結果を踏まえて、miRNA inhibitor (Alexa Fluor 647 dye で標識) を、Invivofectamine を使用してマウスの尾静脈に投与し、我々が用いている常法によってシスプラチンを 4 日間連日投与し最終投与の 24 時間後に握力および四肢筋力の測定、血液および各種骨格筋を採取した後、骨格筋重量測定を行い、シスプラチン投与開始から骨格筋摘出日までの体重、摂食量および摂水量、筋力をモニタリングする予定である。
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