研究実績の概要 |
リゾホスファチジン酸 (LPA) は血液やリンパ液中に存在して多彩な機能を発揮する生理活性脂質であり、特異的受容体として6種類のGタンパク質共役型受容体(LPA1~LPA6) が報告されている。 我々はこれまでに、血管内皮細胞に発現するLPA4とLPA6が協調して胎生期および新生仔期の血管新生に機能することを分子機構とともに明らかにしてきた (Yasuda et al., J. Clin. Invest., 2019)。一方、血管新生に次いで起こるリンパ管新生においてもLPAが重要であることは示唆されているが (Sumida et al., Blood, 2010)、その生体内における役割や分子機構はよくわかっていない。今回我々はリンパ管内皮細胞 (LEC) に発現するLPA受容体のリンパ管新生における機能とその分子機構の解明を目的に研究を行った。 Prox1-CreマウスとLPA4/LPA6-floxマウスを交配させることにより、LEC特異的にLPA4/LPA6を二重欠損させたマウス (LEC-DKOマウス) を樹立した。そのLEC-DKOマウスは胎生後期に重篤な浮腫を呈し、ほぼ全てが胎生致死となった。LEC-DKOマウス胎仔の皮膚におけるリンパ管新生はコントロールマウスと比較して著しく損なわれていた。また、ヒトおよびマウスの肺由来LECにおいて、LPAはLPA4/LPA6-G12/G13タンパク質活性化のシグナル下流で、幾つかのリンパ管新生因子の発現を制御していた。本研究の成果は生化学会とJVBMO学会に招待されて発表を行った。今後はより詳細な分子機構を解明する予定である。
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