研究課題/領域番号 |
22K06886
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山中 邦俊 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (90212290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | AAAシャペロン / CDC-48 / 寿命 |
研究実績の概要 |
CDC-48は、極めて多岐にわたる機能に関わるAAAシャペロンである。Nドメインアダプター(20数種類)がそれぞれに特異的な基質を認識し、 C末端アダプター(数種類)が基質をどのように処理するかを規定している。しかしながらどのようにしてNドメインアダプターは自身の「特異的基質」を探し出すのかはいまだに明らかではない。線虫NドメインアダプターASPS-1の機能解析を行う過程で、ASPS-1-CDC-48複合体が、寿命や匂い感知機能に関わっていることを見出している。さらにそれぞれの経路において、PDZ結合モチーフタンパク質やPDZドメインタンパク質と遺伝子間相互作用することも発見している。 昨年度、CRISPR/Cas9法によりN末にFLAGタグを付加したASPS-1を発現する線虫を構築した。FLAGタグを利用した免疫沈降実験から、CDC-48は検出できたがそのアダプターはどれも検出できなかったことから、ASPS-1はCDC-48の解体因子でありデフォルト化に機能している可能性が示唆された。 そこでASPS-1を対象とした免疫沈降物をブルーネイティブ電気泳動法により分離し、抗FLAG抗体および抗CDC-48抗体を用いたウエスタン法により解析した結果、ASPS-1-CDC-48複合体は、ヘテロ二量体もしくはヘテロ四量体として存在していることがわかり、ASPS-1はCDC-48の解体機能を持つNドメインアダプターであると結論づけた。また、CDC-48のN末にFLAGタグを付加した線虫を用いた免疫沈降物をブルーネイティブ電気泳動法・ウエスタン法により解析した結果、ASPS-1の存在有無に関わらずCDC-48の存在様式(六量体)には差は認められなかった。ASPS-1の存在量はCDC-48の200~300分の1である結果から、これは妥当であると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Cas9法を用いて、現時点で必要とされるタグ付きタンパク質を発現する線虫株を構築することができ、それらを用いた免疫沈降実験も進行していること、また必要な種々の変異株の準備もできていること、ブルーネイティブ電気泳動法もうまく稼働するようになったことから、今後はそれらの解析に進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
線虫においてもASPS-1はCDC-48の解体因子でありデフォルト化に機能していることが明らかとなった。ASPS-1単独欠損変異体は、長寿命の表現型を示すが、熱ショックや小胞体ストレスに対する感受性には影響が観察されなかった。これらの結果をまとめるにあたり必要な定量実験や追加実験を行い年度内の論文化を目指す。 昨年、ヒトASPS-1ホモログがVCPを解体することで、VCPがトリメチル化されるようになることが報告された。まずは線虫においても、CDC-48 (VCPホモログ) がトリメチル化修飾を受けているか否かをトリメチル化検出抗体を用いて調べる。次にASPS-1の存在有無でCDC-48のトリメチル化状態が影響を受けるかについて明らかにする。またトリメチル化酵素の変異を導入することで、これまでに明らかにしてきたASPS-1変異が示す長寿命化や臭い検知機能に及ぼす影響、CDC-48の機能や存在様式にどのような影響を及ぼすかも検討する。 これらの結果を踏まえ、ASPS-1がもたらす細胞内機能を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度繰越額は、36148円であり交付額の支出は問題なく遂行され、次年度の使用計画に変更はない。
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