研究課題
近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)が様々な疾患に関わることが明らかにされ、腸内フローラと健康との関係が注目されている。腸内細菌叢が、多様な脂肪酸代謝物を産生することが明らかにされてきているが、それら脂肪酸代謝物の生体内における役割はほとんど明らかでない。申請者は、Gタンパク質共役型受容体であるBLT2受容体の内在性リガンドが12-ヒドロキシエノイック酸(12-HHT)であることを明らかにした。さらに、BLT2遺伝子欠損マウスの解析などから、BLT2が上皮バリア機能に関わることを明らかにしてきた。しかし、腸管上皮細胞に発現するBLT2受容体を活性化する腸内環境内の生理的リガンドは明らかでない。本研究では、腸内細菌が産生する脂肪酸代謝物ライブラリーを用いて、BLT2を活性化する腸内環境内の新奇脂肪酸代謝物を同定し、腸管バリア機能における新規脂肪酸代謝物の生理機能を明らかにすることを研究目的とした。腸管内に多く存在する脂肪酸や、腸内細菌が産生する主要な脂肪酸代謝物約80種類からなる脂肪酸ライブラリーを用いて、BLT2受容体を活性化する脂肪酸の同定を行なった。さらに、BLT2受容体を安定的に発現するCHO細胞(CHO-BLT2)とコントロール細胞(CHO-Mock)を用い、リガンド刺激依存的な細胞内カルシウム濃度の上昇(Ca2+アッセイ)を指標にスクリーニングを行なった。その結果、BLT2を特異的に活性化する複数のリガンド候補となる脂肪酸を同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
腸内細菌が産生する脂肪酸ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、BLT2を活性化する新規脂肪酸を複数同定できたため。
同定した脂肪酸の構造活性相関を検討し、BLT2を活性化する化合物の構造を明らかにする。この結果を元に腸内細菌が産生する化合物の探索を行う。またBLT2の活性化能を明らかにするために、TGFalpha切断アッセイやカルシウムアッセイを行う。将来的には、MDCK-BLT2細胞を用いたタイトジャンクション形成における新規脂肪酸の機能やマウス大腸炎モデルを用いた新規脂肪酸の生理活性を検討する。
参加を予定していた海外学会に参加することができなかった。また人員不足により予定していた実験が遂行できなかった。繰り越した研究費は、消耗品の購入に当てる予定である。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://plaza.umin.ac.jp/j_bio/publication.html