研究課題
申請者らは、ロイコトリエンB4(LTB4)第1受容体BLT1と第2受容体BLT2を同定し、遺伝子欠損マウスの解析などから、BLT1とBLT2を介した多彩な生理作用を明らかにしている。急性進行性糸球体腎炎は、急速に腎機能が低下し、最悪末期腎不全に至る可能性のある病気である。本年は急性進行性糸球体腎炎におけるLTB4とBLT1の役割を解明することができた。抗糸球体基底膜抗体を含む羊血清とイムノグロビン投与により糸球体障害を生じるマウス腎炎モデルを確立したところ、血清投与6時間後に好中球が糸球体に浸潤すること、及び好中球除去によって腎炎の症状が大きく軽減することを見出した。さらに好中球の走化性因子であるLTB4を質量分析計を用いて定量したところ、血清投与後1時間をピークとするLTB4産生上昇を観察した。次にLTB4の合成酵素であるLTA4水解酵素欠損マウスとBLT1欠損マウスを用いて腎炎モデルの解析を行ったところ、野生型マウスと比べて糸球体腎炎の症状が軽減されることを見出した。さらに野生型マウスにBLT1拮抗薬を投与すると、腎炎の症状が軽減すること、またヒト糸球体腎炎患者の腎生検サンプルで、多くのBLT1陽性細胞が糸球体に集積することを見出した。これらの結果は、LTB4-BLT1シグナルが糸球体への好中球集積を促進することで腎炎の重症化に関わることを示唆している。本研究により、LTB4-BLT1シグナルを阻害することが急性進行性糸球体腎炎の予防や治療につながる可能性を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
急性進行性糸球体腎炎におけるLTB4とBLT1の役割を明らかにできたから。
腸内細菌が産生する脂肪酸のBLT2を介した役割を明らかにする。
予定していた海外出張を取りやめたため。細胞培養や質量分析の消耗品費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
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