研究課題/領域番号 |
22K06893
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松永 哲郎 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00723206)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超硫黄分子 / エネルギー代謝 / 硫黄呼吸 / シングルミトコンドリア解析 / 超硫黄分子カプセル |
研究実績の概要 |
研究代表者らはこれまで、システインパースルフィド(CysSSH)に代表される超硫黄分子の生体内生成を見出し、高い求核性によって多彩なレドックスシグナル応答に関与することを明らかにしてきた。その過程において、超硫黄分子の主要な生成系として、タンパク質翻訳に関わるシステイニルtRNA合成酵素(CARS)を同定し、加えて、CARS由来の超硫黄分子がミトコンドリア膜電位形成に関与すること、すなわち、真核生物・ヒトにおいて硫黄呼吸が存在する可能性を見出した。ごく最近、驚くべきことに、火山の噴火口など、天然に見られる硫黄同素体である環状S8硫黄が、哺乳類細胞において生成され、ミトコンドリアの硫黄呼吸に関与する可能性が判明した。本研究課題では、応募者が独自に開発したシングル(単一)ミトコンドリア機能解析法を用いて、超硫黄分子によるミトコンドリア機能制御の分子機構の解明に向けた基盤研究を行う。昨年度までの解析により、超硫黄分子カプセルを用いて、広く自然界に存在する環化八硫黄(cyclic-octa-sulfur, S8)が哺乳類・ヒトの生体内において、当初の想定を超える高濃度で蓄積していることが判明した。さらに、シングルミトコンドリア解析により、環状S8硫黄がヒト細胞におけるミトコンドリアの硫黄呼吸に関与する可能性を見出した。真核生物・哺乳類における硫黄呼吸の存在は、今後の硫黄生物学のパラダイムシフトの一役を担う課題研究として極めて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超硫黄分子カプセルを用いて新たに開発した超硫黄解析を行ったところ、広く自然界に存在する環化八硫黄(cyclic-octa-sulfur, S8)が哺乳類・ヒトの生体内において、当初の想定を超える高濃度で蓄積していることを見出した。本研究の当初目的である、超硫黄分子によるミトコンドリア機能制御の分子機構の解明に関する知見をさらに深めることができ、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
独自に開発したシングルミトコンドリア解析系を用いて硫黄呼吸の分子機構を詳細に解析する。具体には、GFP/BFP標識した野生型CARS2および超硫黄生成変異体をミトコンドリアに発現させ、CARS2由来の超硫黄代謝によるミトコンドリアのエネルギー代謝機構を詳細にプロファイリングする。加えて、近年、ミトコンドリアの超硫黄代謝の一端としてsulfide:quinone oxidoreductase (SQR)の関与も指摘されていることから、ほ乳類・ヒトにおける硫黄呼吸におけるSQRの関与についてもシングルミトコンドリア解析系を用いて詳細に解析する。加えて、超硫黄代謝化合物の特異的かつ高感度の質量分析器(LC-MS/MS)を用いたメタボローム解析法を用いて、ミトコンドリア超硫黄代謝機構を定量的に評価する。さらに、昨年度のシングルミトコンドリア解析系を用いた解析により、環状S8硫黄がヒト細胞におけるミトコンドリアの硫黄呼吸に関与する可能性を見出していることから、本解析系および超硫黄分子カプセルを駆使して、硫黄呼吸の分子機構を、環状S8硫黄の関与という視点から詳細に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験実施計画等を見直し効率的に研究を行った結果、当初計画よりも少ない経費で、超硫黄分子カプセルによるS8環八超硫黄の検出と定量解析に関する研究成果 が得られた。本研究の目的である生体内のS8環八超硫黄の代謝経路その生理機能の全容解明に向けて、次年度におけるさらに詳細な分子メカニズムの解析のため に使用する。
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