研究課題
レット症候群(RTT)は,主に女児に発症するX連鎖性顕性遺伝病で,乳児期から重度の進行性発達障害をきたし,生涯を通じて治療と療育が必要であり医療ニーズが高いが,未だ有効な治療法がない。MeCP2が原因遺伝子であり,これらの遺伝子産物の機能的喪失により発症する。いずれの遺伝子もX染色体上にあり,「X染色体不活化」の影響を受け臨床症状の軽重に影響する。また,これら遺伝子のゲノムコピー数の増加はMeCP2重複症候群という重篤な疾患を引き起こすことから,近年発展が目覚ましい遺伝子治療の実現には至っていない。そこで本研究では,「X染色体不活化」により不活性化されてはいるが正常な患者の遺伝子を活用するという新たな発想によるRTT治療法の確立を目指す。本年度は,複数のgRNAの組み合わせによって最大の脱メチル化効果をもたらすものを見出した。また,MeCP2遺伝子の発現に寄与する最小脱メチル化領域を絞り込み,治療に最適なgRNAの組み合わせを決定した。一方,ターゲットとする領域は,ヘテロクロマチン化した不活性化X染色体であり,dCas9-TETのアクセスの効率が悪いことも影響し,期待した脱メチル化率を誘導できなかった。そこで,最近,Cas9のアクセスビリティを向上させるTFDP1遺伝子のノックダウンを併せてエピゲノム編集を行う方法を模索している。また,TFDP1遺伝子以外にもヘテロクロマチンを緩める分子が複数同定されており,それらも含めて不活性化X染色体のアクセスビリティを向上させる方策を検討する。
2: おおむね順調に進展している
複数のgRNAの組み合わせによって最大の脱メチル化効果をもたらすものを見出したことや,また,MeCP2遺伝子の発現に寄与する最小脱メチル化領域を絞り込み,治療に最適なgRNAの組み合わせを決定したことなどから概ね順調に進展していると考える。
これまでのin vitroの系で確立したMeCP2遺伝子の脱メチル化による再活性化をRTTモデルマウスとして,Mecp2遺伝子欠損雌マウスを用いて検証する。また,RTTのiPS細胞のドーパミンニューロンへの分化系において,MeCP2タンパク質/CDKL5タンパク質の発現回復,及びRTT由来iPS細胞のドーパミンニューロンへの分化が正常型に戻るかを検討する。
2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響により,3週間ほど,研究がストップしたため。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)
Endocrine Journal
巻: 71 ページ: 245~252
10.1507/endocrj.EJ23-0103
Scientific Reports
巻: 14 ページ: 330
10.1038/s41598-023-51025-z
Thrombosis Research
巻: 233 ページ: 37~40
10.1016/j.thromres.2023.11.016
Cell Death & Disease
巻: 14 ページ: 642
10.1038/s41419-023-06168-2
巻: 229 ページ: 26~30
10.1016/j.thromres.2023.06.020
PLOS Biology
巻: 21 ページ: e3002281
10.1371/journal.pbio.3002281
Cell Reports
巻: 42 ページ: 112882~112882
10.1016/j.celrep.2023.112882
Journal of Pharmaceutical Sciences
巻: 112 ページ: 3209~3215
10.1016/j.xphs.2023.08.008
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 669 ページ: 19~29
10.1016/j.bbrc.2023.05.061
巻: 230 ページ: 18~26
10.1016/j.thromres.2023.08.010
Cancer Science
巻: 114 ページ: 3946~3956
10.1111/cas.15914
https://chromosome.w3.kanazawa-u.ac.jp/horike/index.html