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2023 年度 実施状況報告書

自己免疫疾患とガンの病態に関与するケモカインCCL21の発現制御メカニズムの研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K06900
研究機関徳島大学

研究代表者

大東 いずみ  徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (00596588)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード胸腺 / ケモカイン / 胸腺髄質上皮細胞 / 自己免疫
研究実績の概要

昨年度得られたインターフェロンシグナル関連分子であるIRF分子がCCL21の転写を正に制御するというin vitro実験結果を受け、CCL21発現を正に制御した分子の一つであるIRF7を欠損するマウス胸腺の組織解析を進めた。In vitroでの結果に反して、IRF7欠損胸腺では、髄質領域でCCL21の発現が検出され、髄質構造も正常であった。また、インターフェロンシグナルの重要メディエーターであるSTAT1を欠損するマウス胸腺でも、髄質領域でCCL21の発現が検出され、胸腺構造の異常は検出されなかった。IRF7やSTAT1を欠損するマウスでは、T細胞への自己抗原提示を担うAire発現髄質上皮細胞の生成異常と、髄質形成異常が報告されているが、既報とは異なり、IRF7やSTAT1は、CCL21発現制御のみならず、Aire発現細胞分化や髄質形成への寄与はわずかであることが明らかになった。
一方、髄質上皮細胞分化異常により機能的な髄質形成を欠くRelB欠損マウスの胸腺を解析したところ、本来なら髄質が形成される領域でCCL21の発現が検出された。このことから、CCL21発現はRelB非依存的なメカニズムで制御されていること、さらに、CCL21発現上皮細胞は、成熟髄質上皮細胞への分化ポテンシャルを有する可能性が考えられた。
そこで、CCL21発現細胞が髄質上皮前駆細胞である可能性を検討したところ、胎仔期のCCL21発現髄質上皮細胞は、T細胞の髄質移動を制御する機能的に成熟した細胞であるにもかかわらず、Aire発現髄質上皮細胞への分化能を有することが明らかになった。このことから、機能的には成熟細胞であるCCL21発現上皮細胞は前駆細胞活性を有しており、T細胞の胸腺内移動を担う細胞から自己抗原提示を担う細胞への機能転換が、髄質上皮細胞の亜集団形成に寄与することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CCL21の発現制御機構に関しては、当初予想していた結果とは異なり、インターフェロンシグナル分子の寄与はわずかであることが明らかになったものの、発現制御機構の同定には未だ至っていない。しかし、実験から得られた結果をもとに実施したCCL21発現細胞の分化能解析において、CCL21を産生するT細胞の胸腺内移動を制御する髄質上皮細胞は、自己抗原提示を担う髄質上皮細胞へと分化する前駆細胞活性を有するという新たな知見を得ることができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

CCL21の発現有無だけでなく、他の髄質上皮細胞分子の発現有無を加味することにより分類した髄質上皮細胞亜集団のトランスクリプトーム解析から、CCL21の発現有無のみで分類した上皮細胞間のトランスクリプトーム比較では検出されなかった分子的特徴が検出された。この結果をもとに、CCL21の発現制御を担う分子の同定と、T細胞の自己寛容性獲得における分子基盤の解明に向けて研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたのとは異なる方向へと研究が展開し、研究アプローチを変更したため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、今後の研究推進方策を遂行するために必要な消耗品に使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] バーミンガム大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      バーミンガム大学
  • [国際共同研究] 国立衛生研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      国立衛生研究所
  • [雑誌論文] Developmental conversion of thymocyte-attracting cells into self-antigen-displaying cells in embryonic thymus medulla epithelium2024

    • 著者名/発表者名
      Ohigashi Izumi、White Andrea J、Yang Mei-Ting、Fujimori Sayumi、Tanaka Yu、Jacques Alison、Kiyonari Hiroshi、Matsushita Yosuke、Turan Sevilay、Kelly Michael C、Anderson Graham、Takahama Yousuke
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.7554/eLife.92552

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The role of thymic epithelium in thymus development and age-related thymic involution2024

    • 著者名/発表者名
      Fujimori Sayumi、Ohigashi Izumi
    • 雑誌名

      The Journal of Medical Investigation

      巻: 71 ページ: 23~39

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Endogenous CCL21-Ser deficiency reduces B16-F10 melanoma growth by enhanced antitumor immunity2023

    • 著者名/発表者名
      Fujie Ryonosuke、Kurowarabe Kaoru、Yamada Yuki、Fujiwara Kakeru、Nakatani Hayato、Tsutsumi Kenta、Hayashi Ryota、Kawahata Hinami、Miyamoto Megumi、Ozawa Madoka、Katakai Tomoya、Takahama Yousuke、Ohigashi Izumi、Hayasaka Haruko
    • 雑誌名

      Heliyon

      巻: 9 ページ: e19215~e19215

    • DOI

      10.1016/j.heliyon.2023.e19215

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CCL21‐Ser expression in melanoma cells recruits CCR7+ naive T cells to tumor tissues and promotes tumor growth2023

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto Megumi、Kawato Yuki、Fujie Ryonosuke、Kurowarabe Kaoru、Fujiwara Kakeru、Nobusawa Reika、Hayashi Ryota、Iida Kei、Ohigashi Izumi、Hayasaka Haruko
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 114 ページ: 3509~3522

    • DOI

      10.1111/cas.15902

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Embryonic keratin19+ progenitors generate multiple functionally distinct progeny to maintain epithelial diversity in the adult thymus medulla2023

    • 著者名/発表者名
      Lucas Beth、White Andrea J.、Klein Fabian、Veiga-Villauriz Clara、Handel Adam、Bacon Andrea、Cosway Emilie J.、James Kieran D.、Parnell Sonia M.、Ohigashi Izumi、Takahama Yousuke、Jenkinson William E.、Hollander Georg A.、Lu Wei-Yu、Anderson Graham
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41467-023-37589-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ケモカインCCL21を発現する胎仔期の胸腺髄質上皮細胞は自己抗原発現髄質上皮細胞への分化活性を有する2023

    • 著者名/発表者名
      大東いずみ、White Andrea J.、Yang Mei-Ting、藤森さゆ美、Anderson Graham、高浜洋介
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Role of β-catenin in mouse thymic epithelial cells for postnatal thymic development2023

    • 著者名/発表者名
      藤森さゆ美、高田慎治、高浜洋介、大東いずみ
    • 学会等名
      The 18th International Symposium of the Institute Network for Biomedical Sciences
    • 国際学会
  • [学会発表] ケモカインCCL21を発現する胸腺髄質上皮細胞は自己抗原発現髄質上皮細胞への分化活性を有する2023

    • 著者名/発表者名
      大東いずみ、White Andrea J、Yang Mei-Ting、藤森さゆ美、Anderson Graham、高浜洋介
    • 学会等名
      第32回 Kyoto T Cell Conference

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公開日: 2024-12-25  

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