研究課題/領域番号 |
22K06923
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
米山 鷹介 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (10748289)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肝線維化 / NASH / バイオマーカー / オルガノイド |
研究実績の概要 |
同一患者より収集した血清と肝生検サンプルから構成されるNASH検体パネルを用いて、肝臓内のどのような病理組織学的要因が、本研究で着目する因子Xの血中レベルに影響を与えるか、解析した。その結果、線維化ステージの進行にともなって血中Xレベルが減少し、ステージ2以降からその減少が生じることを明らかにした。さらに、近年着目されている活動性NASH(脂肪肝・肝細胞変性・炎症を組み込んだNAFLD activity scoreが4点以上、かつ線維化ステージ2点以上)について、患者サンプルを活動性と非活動性に分けて解析したところ、活動性NASH群で血中Xレベルがやはり減少していることを見出した。肝線維化マーカーとして使用されている複数の既存バイオマーカーとの比較から、この因子Xは感度・特異度ともにバイオマーカーとして既存マーカーよりも優れていることが判明した。 研究代表者がこれまでに確立した、ヒトiPS細胞由来肝オルガノイドモデルを用いて、因子Xが肝臓に直接作用する機序を検討した。本オルガノイドは遊離脂肪酸を長期的に添加することで細胞外へのI型コラーゲン沈着を生じるが、遊離脂肪酸と同時に因子Xを添加すると、線維化が顕著に抑制されることを見出した。さらに、因子Xは肝細胞から分泌されて周囲の非実質細胞へ作用すること、さらに、少なくとも肝星細胞様細胞においては一部の亜集団に作用して活性化を抑制していることを示唆するscRNA-seq解析データを得た。また、この因子Xに感受性の高い亜集団に特異的に発現するマーカー分子候補も見出し、in vivoでも同様の細胞が存在するかどうか検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で着目している分泌因子Xについて、NASHのバイオマーカーとしての有用性を明確に示すことができ、知財を確保するに至った。また、その作用機序についても肝臓内での細胞間シグナルの実態が明らかになりつつあるとともに、オルガノイドと並行して動物実験での検証も進行しており、総合して当初計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体を用いて、肝臓内で因子Xと協調して発現変動を示す遺伝子群を同定するとともに、因子Xを上流で制御する経路について検討を進める。また、オルガノイドやマウスを用いた実験を通じて、因子Xが作用する主たる細胞種を明らかにするとともに、NASH病態に対する作用機序の解明を進める。
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