研究課題/領域番号 |
22K06945
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
仁木 利郎 自治医科大学, 医学部, 客員教授 (90198424)
|
研究分担者 |
天野 雄介 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70571587)
松原 大祐 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80415554)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 転移 / 肺腺癌 / スフェロイド |
研究実績の概要 |
肺癌の術後再発率は70-80%と高く,その多くは遠隔転移による.転移が臨床的に顕在化するまでの期間,癌細胞は増殖を休止した“休眠状態”(dormancy)あるいは“潜伏状態”(latency)にあり,その根絶を困難にしている.腫瘍本体から遊離した低接着性の癌細胞は,転移に至る過程で,接着状態とは異なる代謝経路やシグナル伝達経路を活性化することにより,低接着環境下のストレスに適応していると考えられる.本研究では、その分子機構を低接着培養を用いた系にて解析したいと考えている。
まず肺腺癌の主たるドライバー変異から構成される肺腺癌細胞6株 (A549, H441, H2009, HCC4006, LC-2/ad, H2228)を低接着培養系で培養した。(A)通常の接着培養、(B)低接着の初期(低接着培養開始後1日),(C)安定期(低接着培養開始後7日)の時点でサンプルを調整し、メタボローム解析、遺伝子発現解析を行った。その結果、低接着培養にて発現上昇を示す遺伝子群を同定した。その遺伝子群の中、先行研究にて肺腺癌の遊離性の増殖部で発現亢進することが判明しているMUC21に注目して現在研究を進めている。
もう一つのアプローチとして、代謝経路,シグナル伝達の薬理学的阻害を行い,低接着系培養における細胞の生存・増殖に与える阻害効果を指標としてスクリーニングを行った。その結果、治療標的となる代謝経路,シグナル伝達経路の候補を同定したが、その中でも現在IGF1/IGF1Rの経路に焦点をあてて現在研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同定した候補分子群、代謝経路,あるいはシグナル伝達経路のなかから、どの分子、経路に焦点を絞るかの過程で時間を要したが、現在、上記の2つの分子、あるいはシグナル伝達経路に焦点を絞り込んでおり、実験は順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
MUC21に関しては、レンチウイルスベクターによるMUC21のノックダウンが困難であったため、Crispr-Cas9によりMUC21をノックアウトした肺腺癌細胞H441を作成し、低接着培養下での細胞増殖能、あるいはNOD/SCIDマウスを用いた転移モデルにおける転移能が低下するか、検証する。
IGF1/IGF1R経路に関しては、レンチウイルスベクターにてIGF1RをノックダウンしたH441細胞を作成し、低接着培養下での細胞増殖能、あるいはNOD/SCIDマウスを用いた転移モデルにおける転移能が低下するか、検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
同定した候補分子群、代謝経路,あるいはシグナル伝達経路のなかからどの分子、経路に焦点を絞るかの過程で時間を要したが、現在、上記の2つの分子、あるいはシグナル伝達経路に焦点を絞り込んでおり、実験は順調に進んでいる。2024年度中に実験を遂行する予定である。
|