研究課題/領域番号 |
22K06952
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
元井 亨 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 医長 (50291315)
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研究分担者 |
櫻井 奈津子 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 病理科, 医員 (30938395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨軟部肉腫 / STAG2 / コヒーシン / 染色体不安定性 |
研究実績の概要 |
【背景と目的】成人骨軟部肉腫の診断・治療法の開発はその希少性により進んでいない。本研究では新たなアプローチとして染色体不安定性に着目し、特に染色体の分配を制御するコヒーシン複合体の構成分子STAG2異常の腫瘍横断的解析を行う。現状ではSTAG2遺伝子の機能喪失変異はEwing肉腫の約20%と報告されているが、その他の骨軟部腫瘍における異常の頻度は不明である。そこで本年度は腫瘍組織型別の頻度を網羅的に検索した。 【方法】 STAG2機能喪失性変異は抗STAG2抗体を用いた免疫染色により蛋白発現消失として間接的に検出可能である。2種類の抗STAG2抗体(抗SA2ラビットモノクローナル抗体、EPR17865、Abcam社及び抗SAマウスモノクローナル抗体、J-12, Santa Cruz Biotechnology社)の両者あるいはいずれかを用いて検討した。骨軟部腫瘍(15組織型、112症例)のホルマリン固定パラフィン包埋切片を対象とし、内訳は①Ewing肉腫を含むEWSR1関連融合遺伝子を有する腫瘍群(7種類、29例、②非EWSR1関連融合遺伝子を有する腫瘍群(4組織型、7症例)、③複雑な遺伝子異常を有する腫瘍群(5組織型、76例)であった。腫瘍細胞の染色性の完全消失を判定した。 【結果】比較検討により2種類の抗体の染色性は同等で特異的であった。STAG2の完全消失は4/112例(4%)で、内訳は①中ではEwing肉腫の2/13例(15%)のみ、③では骨肉腫の1/44(2%)、粘液線維肉腫1/1例であった。一方、②には陰性例は無かった。 【考察】STAG2機能喪失変異はEwing肉腫に集積しており、EWSR1関連融合遺伝子というよりはEwing肉腫に特異性の高い異常と考えられる。③の腫瘍は高度な染色体不安定性を有するが、STAG2異常を有する腫瘍を含むことが判明し、今後検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既報告のSTAG2機能喪失性変異の免疫組織化学的なスクリーニング方法を検証、導入できた。この系を用いた自験例のEwing肉腫の検討では、既報告に近い発現消失の頻度であった。このため信頼性があると考えられる。同時に複雑な遺伝子異常を有する群でSTAG2異常を有する肉腫を新たに同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後3つの方向性で進める予定である。(1)③の複雑な遺伝子異常を有するグループでは粘液線維肉腫の1例でSTAG2消失例が抽出されたが、検索症例が1例のみなので、粘液線維肉腫、類似の未分化多型肉腫を症例を増やして検討する必要がある。(2)同定された症例のSTAG2の遺伝子異常の確認をターゲットシーケンスやPCRを用いて行う。(3)③のグループにはSTAG2が野生型であったとしても、他のコヒーシン複合体構成因子の遺伝子異常のある可能性がある(STAG1、RAD21、CTCFなど)。これらについて検索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの使用額であったが、都度の消耗品購入時の価格の実際の変化により生じた。次年度の消耗品の購入に使用する。
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