研究課題/領域番号 |
22K06955
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
小坂 朱 旭川医科大学, 医学部, 講師 (40561030)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | IL-6 / TNBC |
研究実績の概要 |
乳がんの約10-20%を占めるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)は悪性度が高く、治療薬が他のタイプの乳がんより少ないこともあり予後不良であることから、新たな治療法が必要とされている。そこで、TNBCに対するSTINGアゴニストの抗腫瘍効果を増強するために、IL-6受容体阻害剤を併用する治療法の開発およびそのメカニズムを解明することを目的として研究を行う。はじめに、最適な併用治療法レジメンを確立するため、前年度までの結果をもとに薬剤の投与量および投与スケジュールについて、担がんマウスモデルを用いて複数の条件検討を行った。STINGアゴニスト単独治療は腫瘍増殖抑制効果が認められたが、IL-6受容体阻害剤の単独治療では腫瘍増殖の抑制効果は見られなかった。両者の併用治療により腫瘍が完全退縮する個体が認められたが、STINGアゴニスト単独投与群と比較して生存期間に有意差がなかった。TNBCは他のタイプの乳がんに比べてIL-6が高発現していることが報告されているが、マウスTNBC細胞株の通常培養上清中におけるIL-6は検出限界以下であった。一方、TNBC担がんマウスにSTINGアゴニストを腫瘍内投与すると、腫瘍組織および腫瘍浸潤リンパ球においてI型IFNであるIFN-b1に加えてIL-6の発現も増加した。そこで、腫瘍由来のIL-6が抗腫瘍免疫応答および腫瘍微小環境に与える影響を直接的に検討するために、IL-6欠損のTNBC細胞株を複数作製した。今後は作製した細胞株を用いた担癌マウスモデルを作製して検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TNBCに対するSTINGアゴニストの抗腫瘍効果がIL-6受容体阻害剤の併用により大きく増強しないこと、細胞株由来のIL-6産生が予想より高くないことから、当初の計画を変更して、IL-6欠損TNBC細胞株を作製して、その腫瘍増殖および免疫応答の変化についての解析を行ってから、併用治療による抗腫瘍効果の機序解明を行う。そのため、当初予定していた機序解明ついての検討はできなかったが、IL-6欠損TNBC細胞株を用いた解析を行うことにより、より効果的な治療法の開発および詳細な機序解明に繋がることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍由来のIL-6が抗腫瘍免疫応答および腫瘍微小環境に与える影響を検討するために、IL-6欠損細胞株を用いた担がんマウスモデルを作製し、腫瘍増殖および免疫応答の変化について解析を行う。細胞株を移植したマウスの腫瘍組織、所属リンパ節および脾臓におけるT細胞および抗原提示細胞などの表現型および機能解析(サイトカイン産生能、抗原特異的反応など)を行い、より効果的な治療法の開発を目指す。さらに、併用治療効果を予測できるバイオマーカーを同定するために、IL-6シグナルに関与する分子の阻害剤などを用いて併用治療効果を検討し、バイオマーカーになり得る分子の同定を試みる。
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