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2022 年度 実施状況報告書

老化細胞を標的とした原発性胆汁性胆管炎の新しい治療法開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K06957
研究機関金沢大学

研究代表者

佐々木 素子  金沢大学, 医学系, 准教授 (70225895)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード病理学 / 原発性胆汁性胆管炎 / 自己免疫性疾患 / 細胞老化 / cGAS-STING経路 / 組織透明化 / ライトシート顕微鏡
研究実績の概要

この研究課題では,老化細胞制御による新しい原発性胆汁性胆管炎(PBC)治療法の開発基盤となる基礎的研究を行う。また, 現在明らかでない, 胆管細胞老化におけるcGAS (cyclic GMP-AMP synthase)-STING (stimulator of interferon genes)自然免疫シグナル経路の関与, 老化細胞の表現型バリエーションとPBCの胆管病変, 病型やウルソデオキシコール酸(UDCA)治療反応性などとの関連を検討する。
2022年度は, 以下の検討①-③を行った。①PBC肝組織における細胞老化の特徴と臨床病理学的項目との関連について, 対照疾患肝との比較検討を進めた。その結果, cGAS-STING経路に関連する因子であるHippo-YAP経路が, cGAS-STING経路の抑制により細胞老化, SASP産生を抑制することを明らかにした(国際学会[AASLD]にて口演発表, 英文論文発表)。②cGAS-STING経路活性化について, 微小核,細胞質内dsRNA蓄積,γH2AX, ATM発現, cGAS, STING発現, cGAS-STING経路活性化指標(IFN-β, Ifit3)の発現などの検討を進めた。PBCの胆管病変におけるSTING発現亢進など, いくつかの新しい結果を得ることができた。成果を学会発表準備中である。③組織透明化技術とライトシート顕微鏡を利用して, ヒト肝組織の胆管や血管ネットワーク構築と胆管細胞老化の空間的相互関連の検討を開始した。PBC症例を含む30症例の肝組織収集, 組織透明化の条件検討, 免疫蛍光染色の条件検討, ライトシート顕微鏡による画像取得の条件検討などを行った。その結果, 良好な胆管ネットワークの3D画像の取得が可能になった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は, PBC肝組織における細胞老化の特徴と臨床病理学的項目との関連の検討を進めた。成果の一部としてHippo-YAP経路が, cGAS-STING経路の制御を介して細胞老化を抑制することを明らかにして, 国際学会(AASLD)で口演発表, 論文発表することができた。また, cGAS-STING経路活性化について, 微小核,細胞質内dsRNA蓄積,γH2AX, ATM発現, cGAS, STING発現, cGAS-STING経路活性化指標(IFN-β, Ifit3)の発現などの検討を進めた。PBCの胆管病変において, STING発現が亢進するなど, いくつかの新しい結果を得ることができ, 一部の成果を発表準備中である。さらに, ヒト肝組織の組織透明化とライトシート顕微鏡を利用して, 胆管細胞老化と胆管ネットワーク形態の関連, 血管老化や線維化との空間的相互関連の検討を開始した。PBC症例を含む肝組織を30症例収集して, 組織透明化の条件検討, 免疫蛍光染色の条件検討, ライトシート顕微鏡による画像取得の条件検討などを行った。現時点では, 各種条件検討に試行錯誤中であるが, 胆管ネットワークについて、概ね良好な3D構築画像が取得できる様になった。

今後の研究の推進方策

2023年度は, ①PBC肝組織における細胞老化の特徴(表現型バリエーションやcGAS-STING経路の関与)とその意義についての検討, 組織透明化とライトシート顕微鏡を利用した細胞老化と胆管, 血管の立体構築についての検討をさらに進める。さらに, ②当教室で株化したヒト, ラット, マウス培養胆管細胞, miR-506導入胆管細胞, 血管内皮細胞, 間質細胞などの培養細胞を用いて, 老化細胞の特徴(表現型バリエーションやcGAS-STING経路の関与)の検討を行う。また, 老化細胞除去薬やcGAS-STING経路制御による老化細胞制御やSASP抑制効果の検討も行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度は, 最終的に約220000円の残高がでた。 海外発注を要する購入予定試薬(蛍光標識抗体, 細胞培養関連試薬など)の選定が年度末締切ギリギリになった為、入荷予定も考慮して、次年度に発注することにした。次年度の予算に繰り越し, 試薬(蛍光標識抗体, 細胞培養関連試薬など)の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Drug-induced sarcoidosis-like reaction three months after BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccination: A case report and review of literature2023

    • 著者名/発表者名
      Kim Soo Ryang、Kim Soo Ki、Fujii Takako、Kobayashi Hisato、Okuda Toyokazu、Hayakumo Takanobu、Nakai Atsushi、Fujii Yumi、Suzuki Ryuji、Sasase Noriko、Otani Aya、Koma Yu-ichiro、Sasaki Motoko、Kumabe Tsutomu、Nakashima Osamu
    • 雑誌名

      World Journal of Clinical Cases

      巻: 11 ページ: 177~186

    • DOI

      10.12998/wjcc.v11.i1.177

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An involvement of Hippo-yes-associated protein pathway in biliary epithelial senescence in primary biliary cholangitis.2023

    • 著者名/発表者名
      Sasaki M, Sato Y, Nakanuma Y
    • 雑誌名

      Clin Res Hepatol Gastroenterol

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.clinre.2023.102106

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Is Nestin a diagnostic marker for combined hepatocellular-cholangiocarcinoma?2022

    • 著者名/発表者名
      Sasaki M, Sato Y, Nakanuma Y
    • 雑誌名

      Histopathology

      巻: 80 ページ: 859-868

    • DOI

      10.1111/his.14622

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 肝細胞腺腫2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木素子
    • 雑誌名

      臨床検査

      巻: 66 ページ: 726-733

  • [雑誌論文] 画像診断と病理・薬物療法後のpseudoprogression:組織所見2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木素子
    • 雑誌名

      肝臓クリニカルアップデート

      巻: 8 ページ: 73-77

  • [雑誌論文] 転移性肝腫瘍の病理診断とゲノム検査を依頼するときのポイント2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木素子
    • 雑誌名

      肝臓クリニカルアップデート

      巻: 8 ページ: 185-191

  • [学会発表] AASLD/JSH Symposium: Women's Health. Liver Masses in Women: Adenomas & HCC.2022

    • 著者名/発表者名
      Motoko Sasaki
    • 学会等名
      The Liver Meeting 2022 (November 4-8, Washington D.C.)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] An involvement of hippo-yes-associated protein (yap) pathway and its association with biliary epithelial senescence in the pathogenesis of primary biliary cholangitis2022

    • 著者名/発表者名
      Motoko Sasaki, Yasunori Sato, Yasuni Nakanuma
    • 学会等名
      The Liver Meeting 2022 (November 4-8, Washington D.C.)
    • 国際学会
  • [学会発表] 原発性肝癌の背景肝における多発胆管腺腫の臨床病理学的意義2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木 素子 佐藤 保則 中沼安二
    • 学会等名
      第111回日本病理学会総会 (4/14-16; 神戸国際会議場, 神戸)
  • [学会発表] 原発性胆汁性胆管炎の胆管病変におけるHippo-yes-associated protein (YAP)経路の関与と細胞老化との関連2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木 素子 佐藤 保則 中沼安二
    • 学会等名
      第58回日本肝臓学会総会 (6/2, 3, パシフィコ横浜)
  • [学会発表] 胆管腺腫における遺伝子異常の解析:小型胆管型肝内胆管癌の前癌病変の同定を目指して2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木 素子, 佐藤 保則 中沼安二
    • 学会等名
      第58回肝癌研究会(5/12-13, 虎ノ門ヒルズフォーラム, 東京)
  • [学会発表] 画像上悪性腫瘍と鑑別困難であったが, 肝腫瘍生検により診断し得た良性病変の4症例2022

    • 著者名/発表者名
      金 秀基, 藤井 貴子, 金 守良, 小林 久人, 奥田 豊一, 中島 収, 隈部 力, 佐々木 素子, 狛 雄一朗
    • 学会等名
      第58回肝癌研究会(5/12-13, 虎ノ門ヒルズフォーラム, 東京)
  • [学会発表] Nestinは肝内胆管癌の亜分類(小型胆管型 vs大型胆管型)に有用か?2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木 素子, 佐藤 保則
    • 学会等名
      第58回胆道学会 (10/13, 14 パシフィコ横浜)

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公開日: 2023-12-25  

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