研究実績の概要 |
Acquired cystic disease-associated renal cell carcinoma (ACD-RCC)における、KMT2CとTSC2変異の特徴と腫瘍発生における両遺伝子の意義を明らかにするために、その前駆病変と考えられているACD-RCC-like cystを解析対象に加え、両遺伝子のDNAシークエンシングを施行した。昨年度実施したDNAシークエンシングの結果を解析し、ACD-RCCには他の組織型の腎癌より、KMT2CとTSC2変異の頻度が高いことが分かった。さらに、ACD-RCCにおいて、KMT2CとTSC2の機能が消失していることを確認するために、KMT2C, H3K4me3, TSC2, GPNMBの免疫染色を施行したが、KMT2CとTSC2変異の有無と各抗体の染色結果との間に相関は明らかではなく、本研究で検出した遺伝子変異がpathogenicであることを支持する結果は得られなかった。また、ACD-RCC-like cystや背景の腎臓に、KMT2C, TSC2変異はほとんど検出されなかった。本研究により、KMT2CとTSC2変異はACD-RCCに頻度が高いことが分かったが、ACD-RCC-like cystに両遺伝子変異は検出されず、少なくともその腫瘍発生の初期段階に関与していることを支持する結果は得られなかった。ACD-RCCの進展に関与している可能性は完全には否定できないが、検出された変異はいずれもpathogenicとは考えにくく、積極的に腫瘍の進展に関与しているとはいえない。以上の論旨を2024年3月にBaltimoreにて開催された国際学会 (The United States and Canadian Academy of Pathology)にて発表した。
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