研究課題/領域番号 |
22K06967
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 博之 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (60377330)
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研究分担者 |
三枝 信 北里大学, 医学部, 教授 (00265711)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 進行大腸癌 / S100A4 / 簇出 |
研究実績の概要 |
NCRT非施行例の進行大腸癌におけるS100A4発現の意義を検証した。2009年12月から2021年12月までに当院で大腸癌と診断され外科的切除された150症例の大腸癌検体を対象に、S100A4の免疫染色を行い、染色強度と陽性率を評価した。観察期間 (範囲)の中央値1881.5日 (49-4583日)であった。S100A4の免疫染色の染色強度と陽性率のスコアの積を染色スコアとし、S100A4スコア2以上を高発現とした。S100A4発現と臨床病理学的因子の関係性の統計学的検討を行ったところ、S100A4高発現は、統計学的有意に深達度が深く、リンパ管侵襲、静脈侵襲、簇出が多く見られた。予後解析では、S100A4高発現は全生存期間で有意に予後不良となった。単変量解析では、深達度、リンパ節転移、遠隔転移、病理学的ステージ、簇出、S100A4発現が予後不良因子であったが、多変量解析ではS100A4は独立した予後不良因子とはならなかった。腫瘍の領域を、簇出部、簇出直上腺管、腫瘍中心部に分けてS100A4、β-カテニン、Ki-67の発現を比較したところ、簇出部においてS100A4とβ-カテニンが高発現、Ki-67低発現の傾向があった。以上のように、大腸癌におけるS100A4の発現は、予後不良の臨床病理学的子と密接に関与し、大腸癌の進展に関与することが示唆された。S100A4スコアはBD部で有意に高く、核β-cateninと正の相関関係を示した。一方、増殖能とは、負の相関を示した。S100A4は、進行期大腸癌の予後不良因子で、β-cateninと協調して、EMT誘導を介して簇出部形成に寄与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫染色の染色性が安定しており、均一な判定基準を用いた評価が可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
S100A4とβ-カテニンによる進行期直腸癌のNCRT抵抗能獲得機構を解明する。これまでのデータを集約して、S100A4依存性癌幹細胞ニッチ形成の観点からNCRT抵抗能獲得機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色の試薬の条件設定が順調で、使用料を抑えた条件での使用が可能となり、試薬の節約ができ、使用料試薬購入費で予定より購入費が抑えられたため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画としては、免疫染色、ウエスタンブロット、ルシフェラーゼアッセイ用の試薬や消耗品の購入、論文作成準備のための英文校正、論文が掲載されたさいの掲載料に充てる。
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