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2023 年度 実施状況報告書

末梢動脈疾患の病態解明とモデル動物による新規治療の開発応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K06970
研究機関日本大学

研究代表者

羽尾 裕之  日本大学, 医学部, 教授 (40393243)

研究分担者 大浦 紀彦  杏林大学, 医学部, 教授 (40322424)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード末梢動脈疾患 / 重症下肢虚血 / 粥状動脈硬化
研究実績の概要

本研究では重症下肢虚血による切断肢の末梢動脈の病理組織学的変化を明らかにする為に重症下肢虚血の切断肢から末梢動脈(前脛骨動脈・後脛骨動脈)を取り出した。自施設症例とともに、分担研究者の大浦からは切断肢から採取された血管検体が供与され、検討に十分な症例数の蓄積を行った。狭窄の程度を確認するために、Ex-vivoで血管造影を撮像した。剥離した血管全体の軟線撮影も行い、血管壁における石灰化の程度や分布を見た。石灰化の面積については画像解析ソフトで定量評価を行った。生理的食塩水に血管を浸し、血管内超音波・光干渉断層法・血管内視鏡を用いてEx-vivoで血管内イメージングを撮影した。イメージングの撮影後、血管は10%緩衝ホルマリン固定後に5mm間隔で標本とした。これらの病理組織標本から狭窄度、内膜・中膜の性状、石灰化の程度や分布、内腔の狭窄機序、脂質沈着の程度などを検討した。また臨床的背景と病理組織像との対比を行った。さらに血管の解剖学的部位の違いによる病理組織学的特徴を検討した。
本研究により、前脛骨動脈と後脛骨動脈では動脈硬化病変の特徴が全く異なることを明らかにし、世界に先駆けて国際学会および英文原著論文として報告した。病変の部位における動脈硬化の形質が異なることから、病態形成の機序や治療の選択などに重要な知見を与えた。
さらに我々は動脈硬化が誘発されるマイクロミニブタを用いて、下肢動脈にステントを留置して、ステント内の新生内膜に対するdrug-coating balloonの治療効果を検証した。薬剤が塗布されていない通常のballoonによる治療と比較し、治療後の新生内膜の増殖が有意に抑制され、組織学的にもより成熟した線維結合組織が認められた。薬剤の塗布の状態を血管内イメージングおよび走査電子顕微鏡で観察した。現在、本研究成果は原著論文として準備中で投稿予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重症下肢虚血による切断肢の末梢動脈の病理組織学的変化を明らかにすることができた。臨床的背景と病理組織像との対比を行い、血管の解剖学的部位の違いによる病理組織学的特徴を検討できた。国際学会および原著英文論文として発表した。さらに動脈硬化誘発マイクロミニブタを用いた末梢動脈のステント留置後の再狭窄病変に対するdrug-coating balloonの治療効果を検証し、現在論文準備中である。未使用額を残しているが、研究費をしっかり活用し、おおむね順調に成果は上がっている。

今後の研究の推進方策

モデル動物として、家兎の高脂肪餌による飼育下で末梢動脈に対しバルーンカテーテルによる内膜傷害を行うものである。内膜傷害に加えて我々が新規で検討している薬剤の介入を行うことで、高度動脈硬化病変による末梢動脈の閉塞病変の作成を試みる。現時点で一部の個体において、ヒト末梢動脈疾患の病理組織像と非常に類似した高度の石灰化や高度狭窄病変が認められた。さらに今後は病変形成の再現性について検討し、本モデルを末梢動脈疾患のモデル動物として世界で初めて確立する。本病変の病理組織学的変化を明らかにし、ヒト末梢動脈モデルとしての適性の有無について検証する。モデル確立後においては、末梢動脈疾患に対する抗血小板薬や抗凝固薬などの薬剤の治療効果について検討する。

次年度使用額が生じた理由

ウクライナ戦争の影響で試薬など輸入消耗品の入荷が遅れ納品に時間が掛かった為、次年度、ヒト末梢動脈疾患モデル確立後には、末梢動脈疾患に対する抗血小板薬や抗凝固薬などの薬剤治療効果について検討する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Frequency and Distribution of Sheet and Nodular Calcification in Coronary Arteries in Japanese Patients.2023

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto K, Fujii K, Kawakami R, Shibutani H, Imanaka T, Kawai K, Otagaki M, Morishita S, Hirose T, Hao H, Hirota S, Shiojima I.
    • 雑誌名

      Int Heart J.

      巻: 64(5) ページ: 894-900

    • DOI

      10.1536/ihj.

  • [雑誌論文] Pathology of Critical Limb Ischemia; Comparison of Plaque Characteristics Between Anterior and Posterior Tibial Arteries.2023

    • 著者名/発表者名
      Koyama Y, Migita S, Shimodai-Yamada S, Suzuki M, Uto K, Okumura Y, Ohura N, Hao H.
    • 雑誌名

      J Atheroscler Thromb.

      巻: 30(12) ページ: 1893-1904

    • DOI

      10.5551/jat.

  • [学会発表] 剖検における心筋梗塞死が疑われた場合の対処法および動脈硬化プラーク不安定化の指標となる平滑筋未熟性2023

    • 著者名/発表者名
      羽尾 裕之
    • 学会等名
      日本病理学会関東支部会
  • [学会発表] 動脈硬化:病理+イメージングを治療に生かす2023

    • 著者名/発表者名
      羽尾 裕之
    • 学会等名
      第55回日本動脈硬化学会総会・学術集会
  • [学会発表] 頸動脈の病理学的所見について、血管内イメージング画像との対比2023

    • 著者名/発表者名
      羽尾 裕之
    • 学会等名
      第42回日本脳神経超音波学会総会/第26回日本栓子検出と治療学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 血管病理からみた動脈硬化2023

    • 著者名/発表者名
      羽尾 裕之
    • 学会等名
      第23回 動脈硬化教育フォーラム
  • [学会発表] 末梢動脈の病理組織学的検討:前脛骨動脈と後脛骨動脈の血管内治療後の組織障害の比較2023

    • 著者名/発表者名
      小山 裕, 傳田 侑也, 山田 清香, 鈴木真由美, 大浦 紀彦, 宇都 健太, 奥村 恭男, 羽尾 裕之
    • 学会等名
      CVIT2023
  • [学会発表] 末梢動脈の病理組織学的検討:前脛骨動脈と後脛骨動脈の血管内治療後の組織障害の比較2023

    • 著者名/発表者名
      小山 裕, 傳田 侑也, 山田 清香, 鈴木真由美, 大浦 紀彦, 宇都 健太, 奥村 恭男, 羽尾 裕之
    • 学会等名
      第55回日本動脈硬化学会 学会総会・学術集会
  • [図書] 標準病理学2023

    • 著者名/発表者名
      羽尾 裕之
    • 総ページ数
      32
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-05042-5

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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