研究課題/領域番号 |
22K06981
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
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研究分担者 |
原口 竜摩 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00423690)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老化 / 酸化的ストレス / メチル化 / 骨芽細胞 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
閉経関連骨減少は骨粗鬆症の主因であるが、男女を問わず「老人性骨粗鬆症」の病態解明は、今後の超高齢化社会の重要課題である。骨吸収の主幹となる破骨細胞分化因子RANKLのGFP可視化マウスを樹立して、加齢や糖尿病状態での骨芽細胞と骨細胞におけるRANKLの組織発現を検討する。培養細胞のin vitro加齢モデルとして、1)時間負荷(高継代数)の作用、2)生活習慣病による酸化的ストレスの作用を「RANKL発現をpin-pointで規定するCpG」に着目して検討を行ってきた。 1)については、RANKL遺伝子転写・翻訳開始部位周辺のCpG islandの中でも、TATA-boxの3塩基上流のCGは「RANKL発現をpin-pointで規定する特定のCpG」である。MeCP2はメチル化CpGに結合して転写を抑制するが、4塩基以上連続するA/T配列近傍のメチル化CにMeCP2は高親和性に結合するので、TATA-box直上のCGは「高親和性MeCP2結合配列」に他ならない。即ちTATA-boxの近傍1塩基にメチル化が1個入ることで転写がONからOFFになるpin-point制御である。申請者らは、骨芽細胞系株ST2への時間的負荷(高継代数)が、pin-pointメチル化によるRANKL遺伝子不活化を実際の骨組織において検出システムを開発することに成功し、このシステムにより、骨細胞に於ける経時的なメチル化付加および、MeCP2蛋白質の加齢による消失が同期して起こることを見いだした。長期培養した骨細胞での最終段階での一塩基メチル化現象が検証でき、現在MeCP2の系譜特異的なノックアウトマウスを作製して、機能解析に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス蔓延による影響で、試薬の到着が遅延することがあったが、その間は、形態学的な検討や計画研究の見直しを行い、計画研究全体としては大きな遅延を来すことは無かった。一塩基のメチル化シトシンを検出する方法の開発に成功したことにより、これまでの細胞レベルの研究が、骨組織を用いた形態学研究へと展開することが出来、研究が大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らが保存した、デノスマブ投与後の骨巨細胞腫一次培養細胞を用い、in vitroでのRANKL 発現と骨芽細胞(Runx2, Osterix,osteocalcin) および骨細胞(E11/gp38, DMP-1,Sclerostin)分化との関連を検討する。培養細胞におけるP16INK4a発現を確認し、siRNAによるP16INK4a抑制の効果を検討する。あらたにncRNAが関与すると思われるエストロゲンによるRANKL遺伝子の安定性を変化させる分子機構の存在を見い出すことに成功した。この系をマウスへの実験系に展開するべく、卵巣摘出マウスモデルなどの閉経後骨粗鬆症モデルを用いて個体レベルの研究に展開することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、抗体類の購入に支障が出たことと、質的な信頼性の回復を待って購入する予定であることから、次年度使用額が生じた。予算の執行については、計画全体の遂行に遅延が出ない様に留意しつつ、公的な援助である科学研究費を支出する際には、常に最善の選択が出来る様に情報を収集し、適切なタイミングで調達することを心がけていく。
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