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2023 年度 実施状況報告書

進行大腸癌における転移特異的な代謝表現型に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K06989
研究機関大阪医科薬科大学

研究代表者

廣瀬 善信  大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (20293574)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード進行大腸癌 / 代謝酵素 / 脈管侵襲 / 簇出 / 代謝 / 転移 / グルタミナーゼ / 乳酸脱水素酵素
研究実績の概要

本研究の目的は、進行大腸癌の簇出(TB)を含む発育先進部で、代謝酵素であるglumaminase(GLS1)高発現およびlactate dehydrogenase A (LDHA)低発現という変化が特異的に生じている意義を明らかにすることである。昨年度にこれら代謝酵素蛋白(GLS1、LDHA)およびリンパ管マーカー(D2-40)の免疫組織化学、ならびに静脈同定のためのビクトリア青染色を同一切片上で行う多重染色法が確立できたため、進行大腸癌症例においてこの多重染色を実施した。得られた染色標本において、①低分化胞巣(PDC)における染色性、②転移途上(=脈管侵襲)および転移先(リンパ節)における染色性、の二点について病理学的な半定量的解析を実施した。その結果、得られた知見は以下である。
①進行大腸癌症例における多重染色標本において、先行研究で示されたTBを含む先進部におけるGLS1高発現およびLDHA低発現の特異的パターンが確認できた。同時に、PDCにおいても、TBを含む腫瘍先進部と同様の染色パターンが観察された。
②進行大腸癌症例の転移途上である脈管侵襲、および転移先であるリンパ節におけるGLS1およびLDHA発現を検索したところ、脈管侵襲におけるGLS1およびLDHAの発現は、腫瘍先進部、TB、PDCに比べて低下する傾向を示した。また、リンパ節転移におけるGLS1およびLDHAの発現は、原発巣の中心部と同様の染色性を示した。
以上より、代謝酵素であるGLS1およびLDHAの発現パターンは、大腸癌の原発巣中心部と転移先では類似していたが、TB/PDCを含む先進部および転移途上においては特異なパターンを示した。とくに、転移途上のそれら代謝酵素発現はいずれも低下しており、腫瘍先進部とは異なっていた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

代謝酵素と脈管侵襲を同一切片上で評価する多重染色手技が昨年度に確立できたため、順調に進んでいる状況である。現状では、予定していた検索項目の評価の多くを終えており、その一部を関連学会で発表した。

今後の研究の推進方策

次年度は、転移途上におけるGLS1およびLDHAの発現低下の原因を探ることを目的として、それら代謝酵素の発現制御に関連する因子を検討したい。具体的な候補因子としては、HIF-1など転写因子、カドヘリン、SNAIL等のEMT 関連因子、CD44等の幹細胞関連因子が考えられる。これら免疫組織化学のデータをもとに、代謝表現型と転移の関連性についてまとめ、関連学会での発表、および論文投稿を目指す。また、当初予定していた転移途上を検索ターゲットとした細胞培養実験であるが、あまり踏み込んだ検索はしない予定とする。その理由としては、これまでに出つつある結果は当初の仮説(腫瘍先進部と転移途上の代謝は類似する)とは異なるためである。

次年度使用額が生じた理由

得られた結果から、当初予定していた癌細胞培養実験の重要性が相対的に少なくなり、その分の使用額が減ったため、次年度使用額が生じた。
次年度には、当初の実験計画を若干変更しつつ、減らした細胞培養実験関連の研究費分については、免疫組織化学関連の研究費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Intratumoral metabolic heterogeneity of colorectal cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Hirose Yoshinobu、Taniguchi Kohei
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Cell Physiology

      巻: 325 ページ: C1073~C1084

    • DOI

      10.1152/ajpcell.00139.2021

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 転移を伴う信仰大腸癌における代謝表現型の病理解析2024

    • 著者名/発表者名
      大西悠介、石田光明、廣瀬善信
    • 学会等名
      第113回日本病理学会総会

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公開日: 2024-12-25  

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