研究実績の概要 |
本年度は胸膜中皮腫(MPM)と反応性中皮過形成(RMH)の鑑別におけるNF2 FISHの有用性について症例数の蓄積増加を主として取り組んできた。 組織標本におけるNF2 FISHヘミ欠失は、陽性となる頻度はBAP1やMTAP, 9p21 FISHに比べ低いものの、上皮型・二相型の49.3% (35/71)で陽性、肉腫型・線維形成型の11% (1/9)に陽性であり、上皮様成分を含む中皮腫をより好感度に検出可能であった。肉腫型では感度が低かった。しかし、BAP1や9p21 FISHの遺伝子異常を有さない中皮腫においても陽性例を確認できており、診断感度の上昇に寄与することが証明できた。 細胞診検体でも、セルブロックを用いた場合には31.8% (7/22)で陽性であり、BAP1, 9p21 FISHと併用することで診断感度が95.5% (21/22)に高まり、組織と遜色ない結果となった。NF2 FISHは9p21 FISHと同様に手技が煩雑で、特殊な機器や試薬を用いる必要があること、判定には習熟に時間が掛かることを考慮すると、一般施設でも簡便に利用できる手段とは言い難い。そのため、9p21 FISHの代替えアッセイであるMTAP免疫染色のように、多施設で簡便に導入可能な代替え手段の同定も必要であり、日常診療に広く利用できるように努めていく。
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