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2023 年度 実施状況報告書

腫瘍進展を促進するゴルジ体へのギャップ結合タンパクの局在―その分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06996
研究機関秋田大学

研究代表者

大森 泰文  秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90323138)

研究分担者 川嵜 洋平  秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (00644072)
廣嶋 優子  秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (30770044)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードギャップ結合 / コネキシン / がん幹細胞 / 細胞内輸送 / ストレス応答
研究実績の概要

令和5年度は、以下の点について研究を進めた。
- Rab5やRab9の活性化型変異体によりコネキシン(Cx)のゴルジ体への局在が誘導され、がん幹細胞(CSC)が増加することの証明・・・Rab5やRab9の常時活性化型変異体、Rab5Q79LおよびRab9Q66Lを、細胞膜にギャップ結合を形成する細胞に導入し、Cxの局在がゴルジ体に移行するかどうかを蛍光免疫染色で検討した。材料としては、肝細胞癌や頭頸部扁平上皮癌、乳癌、皮膚扁平上皮癌などの腫瘍由来でCxが細胞膜に局在する細胞を用いた。Cx分子種に関わらず、Rab5Q97Lを導入し高発現させた全ての細胞株で、Cxのエンドサイトーシスが生じ、これらの細胞株のいくつかにおいては、Rab5Q97LとRab9Q66Lを共発現させた際に、Cx26とCx32のゴルジ体への局在が確認された。Cx43に関しては、Rab5Q97Lによるエンドサイトーシスは観察されたが、Rab9Q66Lとの共発現によるゴルジ体への局在は認められなかった。したがって、Rab5とRab9が協調して細胞膜のCx26とCx32をゴルジ体に局在させることが示された。と同時に、Cx43のエンドソームからゴルジ体への逆行輸送は、Rab9以外の因子も関与していることが明らかになった。また、Rab5Q97LとRab9Q66Lにより細胞膜から逆行輸送されゴルジ体に貯留したCx26やCx32の量が増加した際に、CSCマーカーをFACSで解析したところ、CSCが増加していることが確認された。したがって、Rab5とRab9はCx26とCx32を細胞膜からゴルジ体に逆輸送することで、CSCの割合を高めることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

われわれは、ゴルジ体に局在するコネキシン(Cx)がストレス適応応答を惹起し、この適応応答ががん幹細胞の自己複製を促すことを提唱しているが、最近、適応応答に重要な役割を有するHSP70やHSP40の機能をcurcumin類縁体が阻害し、がん幹細胞の自己複製が促進されるすることを見出した (Suzuki M, 他4名, *Omori Y. FEBS Open Bio, 13:434-446, 2023. *corresponding author)。curcuminの抗腫瘍効果は広く知られていることから、Cxの異常局在により惹起されたストレス適応応答が腫瘍進展抑制の標的になることを示すことができた。また、Cxの細胞膜からのエンドサイトーシスのメカニズムが少しずつ明らかになってきたことから、ノルウェーのグループと共に、総説を発表した(Totland MZ, Omori Y,他5名. Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis, 1869:166812, 2023)。

今後の研究の推進方策

- コネキシン(Cx)のゴルジ体への逆行輸送に関与するRab5やRab9のエフェクターを同定する・・・Rab5やRab9の直接的な作用で機能が増強するタンパクは「エフェクター」と呼ばれ、Rabファミリーの機能の方向性を決定している。Rab5にはEEAなどの、Rab9にはTIP47などのエフェクターが知られているが、どのエフェクターがCxのゴルジ体への局在をサポートしているのか、エフェクターとされるタンパクの発現を様々な細胞で調べ、これらの発現とCxの局在およびCxの分子種を対応させる。この結果からCxのゴルジ体への局在に関与することが予想されるエフェクターを、shRNAベクターもしくはsiRNAによりノックダウンし、Cxのゴルジ体への局在が解除されるかどうかを検討する。
- Rin3やDENND2をノックアウトし、Cxが細胞膜でギャップ結合(GJ)を形成するかどうか、その際にがん幹細胞画分が減少するかどうか、造腫瘍能が低下するかどうかを検討する・・・Cxがゴルジ体に局在している細胞において、Rab5のguanine-nucleotide exchange factor (GEF)であるRin3と、Rab9のGEFであるDENND2の発現が高まっている。そこで、CRISPR-Cas9の系でゲノム編集を施行し、Rin3ノックアウト細胞とDENND2ノックアウト細胞を作製する。この細胞でCxの局在がゴルジ体から細胞膜に変化し、細胞膜にGJを形成できるようになるかどうかを調べる。また、この際に、がん幹細胞画分が減少するかどうか、マウスにおける造腫瘍能が低下するかどうかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

注文した機器の製造が著しく遅延しており、期限内の納品が叶わなかったために未使用の金額が生じた。当該製品は今年度には納品されるので、助成金は予定どおり使用される。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Oslo University Hospital(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      Oslo University Hospital
  • [国際共同研究] University of Sao Paulo(ブラジル)

    • 国名
      ブラジル
    • 外国機関名
      University of Sao Paulo
  • [国際共同研究] University of Poitier(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      University of Poitier
  • [雑誌論文] Endocytic trafficking of connexins in cancer pathogenesis2023

    • 著者名/発表者名
      Totland Max Zachrisson, Omori Yasufumi, Sorensen Vigdis, Kryeziu Kushtrim, Aasen Trond, Brech Andreas, Leithe Edward
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease

      巻: 1869 ページ: 166812~166812

    • DOI

      10.1016/j.bbadis.2023.166812

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] CD98hc as a marker of radiotherapy-resistant cancer stem cells in head and neck squamous cell carcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Yohei, Omori Yasufumi, Suzuki Shinsuke, Yamada Takechiyo
    • 雑誌名

      Archives of Medical Science

      巻: 19 ページ: 1859~1868

    • DOI

      10.5114/aoms.2020.92872

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Connexins, Pannexins and how they are linked to cancer onset and progression: historical perspectives2023

    • 著者名/発表者名
      Omori Y
    • 学会等名
      International Colloquium on Gap Junction & Cancer
    • 国際学会
  • [学会発表] LAT1 expressed in head and neck squamous cell carcinoma is a novel therapeutic target2023

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Y, Suzuki H, Omori Y
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] Analysis of Glycoprotein nonmetastatic melanoma protein B in papillary thyroid cancer and anaplastic thyroid cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Suzuki H, Kawasaki Y, Omori Y
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] クルクミン類縁体GO-Y030はHSP70/HSP40と基質との結合を阻害することでがん幹細胞画分を減少させる2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻弥,大森泰文
    • 学会等名
      第112回日本病理学会総会
  • [学会発表] クルクミン類縁体によるHSP70/HSP40の機能阻害ががん幹細胞画分に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木麻弥,大森泰文
    • 学会等名
      第75回日本細胞生物学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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