研究課題/領域番号 |
22K07002
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
旦部 幸博 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50283560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | drs癌抑制遺伝子 / 代謝リプログラミング / 病原体宿主関係 |
研究実績の概要 |
ウイルス感染細胞が誘導する代謝リプログラミングに対するDrs遺伝子の作用について検討するために、本年度において申請者はDrs遺伝子導入した細胞株等を用いて各種ウイルス(単純ヘルペスウイルス, 水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス, ニューカッスル病ウイルスなど)の感染実験を行った。以前の研究で我々は、野生k型ならびにDrsノックアウトマウス由来線維芽細胞(WTMEF, KOMEF)株について、各種ウイルスの感染性に違いが生じ、Drsの消失がウイルス増殖の亢進につながることを明らかにしたが、Drs遺伝子導入した各種の細胞株でも同じ現象が見られること、またT24(膀胱癌由来)など悪性化によってdrs発現が消失した癌細胞株に対してDrs遺伝子を再導入した場合には、ウイルス増殖の抑制がMEFの場合と比べて強く見られることを確認した。この現象はウイルス種によって違いがあり、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水疱性口内炎ウイルス(VSV)で顕著であった。一方、それ以外のウイルス種では小さな差異に止まった。また、細胞外pHの変化とグルコース消費量を指標にしたグルコース代謝シフトに関しては、WTMEFとKOMEFの差異が比較的大きいのに対し、癌細胞にdrs遺伝子を再導入したことによる差異は比較的小さかった。ここまでの結果から、ウイルス増殖能とグルコース代謝シフトの大小に顕著な相関は認められなかったものの、今後の解析を行う上で有用なウイルスと細胞株を選定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウイルス感染時に見られるグルコース等の主要代謝物の変化が、当初の予想したものよりも小さかったことから、それ以外の代謝産物も含めて、当初から予備案の一つとして考えていたメタボローム解析を行う必要性が高いと判断した。ただし予算の都合上、当該年度中での実施が困難であることから次年度に行うこととしたため、その分、進行が遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
Drs遺伝子を発現している細胞株について、ウイルス(HSV, VSV)を感染したときの代謝物全体の変化をメタボローム解析により解析する。それを通じて、代謝シフトがウイルス感染防御における役割を検討するとともに、感染するウイルスの種類によって質的違いが見られるかどうかを解析する。ウイルスの多くは、アクセサリータンパク質と呼ばれる固有のタンパク質をそれぞれ持っており、宿主細胞への感染に寄与することが知られているが、その中に特にdrsや代謝シフトをターゲットとするものがあるかどうかの可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の過程で、当初計画での予備案として考えていたメタボローム解析を行う必要が生じたが、遂行に必要な金額が比較的高い(業者による概算で100万円程度を予定している)ことから、今年度分の一部を繰越して、次年度分と合わせて実施することにしたため。
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