• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

IL-17シグナリングを介した腸上皮細胞の機能調節

研究課題

研究課題/領域番号 22K07007
研究機関東邦大学

研究代表者

山崎 創  東邦大学, 医学部, 准教授 (70315084)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード腸上皮細胞 / IL-17
研究実績の概要

適正な腸内細菌叢の維持は、消化管における局所的な宿主防御に重要であるばかりでなく、全身性の免疫応答の調節に不可欠である。体の内外の境界部分に位置する腸上皮細胞は腸内細菌叢の形成に重要だが、粘膜固有層のリンパ球から放出されるサイトカインによる機能調節については理解が十分でない。今回我々が、NF-κBの結合因子であるIκBζを腸上皮細胞で特異的に欠損するマウス (Nfkbiz(fl/fl)Vil1-Creマウス)を作製したところ、コントロールマウスと比較して腸内細菌叢が大きく変化していた。その結果、粘膜固有層のリンパ球の異常分化が起き、実験的自己免疫性脳脊髄炎 (Experimental Autoimmune Encephalomyelitis, EAE)などの自己免疫疾患モデルの重症化が認められた。このマウスの小腸組織について遺伝子発現プロファイルを解析したところ、粘膜免疫に重要なIgAの産生に関わる遺伝子群や、抗菌活性を持つラジカルを産生する酵素遺伝子群の発現が著明に障害されていた。マウス小腸由来の上皮オルガノイド培養系において、これらの遺伝子の発現はIL-17刺激によって強く誘導され、しかもその発現誘導はIκBζに依存していた。また、この変異マウスの小腸では、抗菌関連因子の産生に重要なパネート細胞の数が減少していたため、IκBζを介したIL-17シグナル伝達経路は、腸上皮細胞における抗菌関連遺伝子の転写レベルを直接調節するだけでなく、パネート細胞の恒常性維持にも関与していることが明らかになった。実際、マウス小腸由来の上皮オルガノイドをIL-17で刺激してもパネート細胞への影響はほとんど認められないが、IFN-γ刺激による障害後のパネート細胞の再生はIL-17刺激によってIκBζ依存的に促進された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

腸上皮細胞において、IκBζを介したIL-17シグナリングが抗菌関連遺伝子の転写レベルを直接調節するだけでなく、パネート細胞の恒常性維持にも必要であることを示すことができた。さらに、上皮オルガノイド培養系によりそのメカニズムの一部を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

新たに見出したパネート細胞に関する知見をさらに発展させ、IL-17シグナルを介したパネート細胞の再生・分化に関わる分子機構を明らかにする。特に、我々が独自に構築したIFN-γ刺激後のパネート細胞再生系の解析に注力する。

次年度使用額が生じた理由

時期限定的の割引を積極的に利用したほか、一部の受託遺伝子発現解析の実施を次年度に移行した。予定していた遺伝子発現解析を実施するほか、成果の発表に必要なPC機器の購入等に充てる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Interleukin 11 confers resistance to dextran sulfate sodium-induced colitis in mice2023

    • 著者名/発表者名
      Nishina T, Deguchi Y, Kawauchi M, Xiyu C, Yamazaki S, Mikami T, Nakano H
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 26 ページ: 105934

    • DOI

      10.1016/j.isci.2023.105934

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] IκBζ controls IL-17-triggered gene expression program in intestinal epithelial cells that restricts colonization of SFB and prevents Th17-associated pathologies2022

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki S., Inohara N., Ohmuraya M., Tsuneoka Y., Yagita H., Katagiri T., Nishina T., Mikami T., Funato H., Araki K., Nakano H.
    • 雑誌名

      Mucosal Immunology

      巻: 15 ページ: 1321-1337

    • DOI

      10.1038/s41385-022-00554-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Mice lacking death ligand-induced cell death develop Pneumocystis pneumonia2022

    • 著者名/発表者名
      関崇生, 三好嗣臣, 森脇健太, 山﨑創, 米原伸, 中野裕康
    • 学会等名
      第30回日本Cell Death学会学術集会
  • [学会発表] Cell death-deficient mice develop T cell exhaustion2022

    • 著者名/発表者名
      Takao Seki, Shion Miyoshi, Kenta Moriwaki, Soh Yamazaki, Hiroyasu Nakano
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] IκBζ regulates IL-17-triggered gene program in intestinal epithelial cells that restricts colonization of SFB and prevents autoimmune disorders2022

    • 著者名/発表者名
      Soh Yamazaki, Naohiro Inohara, Yousuke Tsuneoka, Hideo Yagita, Takaharu Katagiri, Takashi Nishina, Tetuo Mikami, Hiroyasu Nakano
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi