研究課題/領域番号 |
22K07008
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
長尾 元嗣 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10468762)
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研究分担者 |
浅井 明 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (30500011)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CD36 / 糖尿病 / β細胞 / インスリン分泌機構 / Oikawa-Nagaoマウス / 膵ランゲルハンス島 |
研究実績の概要 |
研究計画書に基づいて本年度は、CD36発現異常がβ細胞のインスリン分泌機構にもたらす影響とβ細胞CD36を標的とした介入を中心に解析を進めた。我々が以前にβ細胞株で示してきた「CD36を起点とするβ細胞機能障害惹起経路」[Nagao et al. Diabetes 2020]を踏まえ、Oikawa-Nagao Diabetes-Prone(ON-DP)マウスでは、膵ランゲルハンス島(膵島)でのCD36高発現と分布異常(β細胞)、脂肪蓄積、AKTリン酸化の抑制、SNAREタンパク質群の低遺伝子発現、β細胞膜に接着するインスリン顆粒数(接着顆粒数)の減少、グルコースおよびカリウム応答性インスリン分泌能の低下といった事象が確認されていることから、これらの異常がCD36の発現異常に起因するものかどうかを調べている。具体的には、抗CD36抗体を用いた機能阻害試験やsiRNAを用いた発現調節試験をON-DPマウスの単離膵島に対して行い、グルコースおよびカリウム応答性インスリン分泌能や「CD36を起点とするβ細胞機能障害惹起経路」に該当するインスリン分泌機構への影響を調べている。さらに、ヒトβ細胞株であるEndoC-βH1細胞に対する抗CD36抗体を用いた機能阻害試験では、インスリン分泌顆粒動態に大きな改善がみられたことを踏まえて、ON-DPマウスの単離膵島についても抗CD36抗体との共培養後の電顕サンプルを作成し、β細胞の電顕像を取得して、CD36の機能阻害がインスリン顆粒動態へ及ぼす影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、我々が以前にβ細胞株で示してきた「CD36を起点とするβ細胞機能障害惹起経路」を踏まえ、ON-DPマウスでみられるβ細胞機能の異常がCD36に起因するものかどうかを中心に解析を行ってきた。研究実績の概要に記したように、ON-DPマウスの単離膵島を用いたCD36の機能阻害試験および発現調節試験を継続的に実施しており、β細胞のCD36に対する介入効果が得られるin vitroでの実験条件を見出しつつある。現在はその成果をもとに、ON-DPマウスのβ細胞におけるインスリン分泌機構のどの部分の異常が、CD36の発現異常に起因するものなのかを調査している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、研究実績の概要に記載した膵島レベルでの研究成果をまとめつつ、それを踏まえてβ細胞でのCD36発現異常と生体レベルでのインスリン分泌不全や糖尿病発症との関連についての解析を進めていく。具体的には、β細胞特異的CD36過剰発現マウスを作成し、耐糖能やインスリン分泌能、さらには高脂肪食投与時の糖尿病発症に関する表現型解析を実施する。また、ON-DPマウスのβ細胞でCD36発現異常が発生する原因に関しては、以前に実施したON-DPマウス膵島のRNAシーケンスデータを改めて分析し、CD36高発現と関連する分子群の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のための英語論文2編の執筆に関わる英文校正について、雑誌発行母体である国内学会が代行して行うこととなり外部業者への発注が不要となった。そのため、英文校正に関わる人件費・謝金の支出がなく、16,946円の次年度使用額が生じた。次年度にも研究成果発表のための英語論文の執筆を行うため、その際の英文校正に関わる人件費・謝金として支出する計画である。
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