研究実績の概要 |
肢帯型筋ジストロフィーR1 (limb-girdle muscular dystrophy R1: LGMDR1)は、カルシウム依存性プロテアーゼのCalpain3を原因遺伝子とする進行性の筋ジストロフィーである。現在までに治療法は確立しておらず、LGMDR1の治療法の確立のためにもLGMDR1発症機序の解明は重要と考えられる。 近年Calpain3を欠損したマウス(CAPN3KO)で筋小胞体のカルシウム貯蔵量が減少することが報告された。さらに、筋小胞体のカルシウム貯蔵量の減少がCalpain3の活性中心変異体のノックインマウス(C129S-KI)ではみられないことが明らかになった。このことから、Calpain3は酵素活性に依存しないメカニズムにより、筋小胞体カルシウム貯蔵量を制御することが考えられる。小胞体カルシウム貯蔵量の減少は細胞にとってストレスであるため、筋ジストロフィー発症機構に深い関わりがあると予想し、本研究ではCalpain3が筋小胞体カルシウム貯蔵量を制御する機構を明らかにすることを目指した。 まず、本年度はCalpain3-WT, KO, KIマウス骨格筋より筋幹細胞を酵素処理法により取得し、in vitroで筋細胞に分化させ、筋細胞内のカルシウム動態を蛍光カルシウム指示薬により測定した。刺激はカルシウムポンプ阻害剤により行った。また、様々なCalpain3変異体を発現するプラスミドを構築し、HEK293細胞やCOS細胞、培養筋細胞においてその発現を確認した。
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