研究課題/領域番号 |
22K07024
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
常山 幸一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10293341)
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研究分担者 |
清水 真祐子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (20759021)
井之上 浩一 立命館大学, 薬学部, 教授 (30339519)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) / 代謝障害関連脂肪肝炎(MASH) / 脳由来神経栄養因子(BDNF) / 酸化ストレス / 脳腸肝相関 |
研究実績の概要 |
2023年に肝臓関連学会が合同でstatementを出し、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)はメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合に限定して,代謝障害関連脂肪肝炎(MASH)との名称に変更された。脳由来神経栄養因子(BDNF)は脳の神経細胞の生存を促進する成長因子として発見されたが、研究代表者らはBDNFが減少したうつ病モデルマウスが代謝障害を背景に高度のMASHを発症することに気づき、そのメカニズムの解明をすすめている。BDNF発現低下マウス(2種類のBDNF遺伝子改変マウス)の病理学的解析により、これらのマウスの肝臓にヒトのMASHの臨床学的特徴の全てが観察されることを見出した。また、トランスクリプトーム解析により、脂質代謝障害や好中球の浸潤、酸化ストレスの亢進などを示す挙動を確認した。BDNFは食欲中枢に抑制的に作用することから、BDNF 発現低下マウスは過食を引き起こし、肥満関連代謝障害を促進する可能性が考慮される。そこでBDNF発現低下マウスに摂食制限を施したところ、体重増加や血糖値上昇が抑制されているにもかかわらず、肝臓に好中球を含む炎症細胞浸潤が起こることを見出した。これらの結果は、BDNFが肥満に依存しない機序により、直接肝臓の炎症に影響しうることを示している。以上の結果はNASHの発症メカニズムの理解や、その治療法の開発に寄与するものと考えられ、J Pathology誌に発表するとともにプレス発表を行った。また、マウスの肝臓の状態を経時的に観察する方法の確立に取り組み、1個体から経時的に4回の肝臓標本採取を可能とする頻回肝生検法を報告した(Heliyon)。現在は、BDNF発現低下マウスの腸内環境の変化を検索するとともに、種々のMASHモデルマウスにおいて、血中、及び臓器中のBDNF発現と、BDNFの受容体の発現を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BDNF発現低下マウス(BDNFヘテロノックアウトマウス(BDNF+/-))がヒトMASH患者の肝臓病理学的所見と合致する肝病変を惹起するメカニズムの一端を、病理形態学的、分子生物学的手法を用いて明らかにし、これらの結果を欧文誌に報告した。また、マウスの頻回肝生検法を確立し、今後、1個体の肝臓の組織学的、分子生物学的な変化を経時的に観察することが可能となった。現在、他の原因に起因する種々のMASHモデルを用いて、BDNFの関与を解析中であり、経時的に肝生検組織、血液、糞便を採取し、冷凍保存している。2022,2023年度に実施したBDNF発現低下マウスの検体(糞便、血清、肝臓、腸管)も凍結保存しており、今後はこれらの試料を用いて、腸内細菌叢の解析と短鎖脂肪酸の解析を含むメタボロミクス解析、腸管の透過性解析や免疫組織学的解析を進めていく予定である。以上により、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、BDNFプロセッシング不全マウスを用いて病理組織学的検討をすすめており、BDNF+/-マウスとの病態比較を行うことで、BDNFの末梢組織(肝・腸、その 他)への関与を明らかにする。さらに、異なる機序に起因するMASHモデルマウスを複数用いて、BDNF、及びその受容体(TrkB, p75)の発現を詳細に検討する。現在、コール酸を添加した高脂肪高コレステロール食(iHFC 食)によるMASH誘導モデルマウス、グルタミン酸ナトリウムを生後すぐに皮下投与して作成するMSGマウス、自然発症メメタボリックシンドロームモデルマウスであるTSODマウスを解析中であり、新規に開発した頻回肝生検法による経時的な臓器採取を併用して、BDNFの脳腸肝相関の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
継続中の動物実験において、研究の進捗に合わせてsacrificeの時期を当初予定より遅らせたため、標本作成や解析の一部を2024年度に実施することとなったため、次年度使用額が生じた。翌年度分の研究費に合わせて、実験動物の病態の病理学的、生化学的、分子生物学的解析に使用する予定である。
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