研究課題/領域番号 |
22K07029
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岡田 保典 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (00115221)
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研究分担者 |
根岸 貴子 (古賀貴子) 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任准教授 (90451905)
望月 早月 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 講師 (80365428)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / ヒアルロン酸分解 / HYBID / TMEM2 / 癌細胞浸潤 |
研究実績の概要 |
HYBID(Hyaluronan-binding protein involved in hyaluronan depolymerization)は、我々が見出した新規のヒアルロン酸分解酵素である(Proc Natl Acad Sci USA 110:5612-5617, 2013)。遺伝子欠損マウスと野生型マウスでの解析から、HYBIDは発育時の長管骨骨端板で高発現し、ヒアルロン酸分解を介して血管新生因子VEGF誘導性血管新生の促進により軟骨内骨化に重要な役割を果たしている。また、変形性関節症(OA)の関節軟骨や関節液中のヒアルロン酸分解により関節軟骨破壊に関わり、紫外線暴露皮膚ではヒアルロン酸分解により皮膚老化に関与している。本年度は、ヒト大腸癌での役割に関して検討した。大腸癌は癌浸潤先端部の間質反応の違いから、Immature型、Intermediate型、Mature型に分類され、この順番で予後不良と報告されている。大腸癌組織で解析した結果、ヒアルロン酸濃度とヒアルロン酸低分子化率はImmature型で他の群より有意に高値であった。また、Immature型の癌関連線維芽細胞でのヒアルロン酸合成酵素HAS2とHYBIDが高発現していることが示され、Immature型癌浸潤先端部に貯留した低分子化ヒアルロン酸が血管新生促進に働いている可能性が示唆された。現在、癌関連線維芽細胞でのHYBIDの発現レベルと癌細胞の増殖、運動、浸潤での作用解析およびHYBID遺伝子をノックダウンや導入した癌関連線維芽細胞と大腸癌細胞の混合細胞を免疫不全マウスへ移植し、増殖、浸潤、転移の違いを調べ、これら実験データを加えて論文作成予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HYBIDと類似分子TMEM2に関して、膝OA関節軟骨細胞でのヒアルロン酸分解活性、OA関節軟骨組織での発現状況、炎症性サイトカインによる発現調節機構について検討し、HYBIDとTMEM2は極めて異なる分子であり、OA関節軟骨組織ではHYBIDがヒアルロン酸分解に中心的な役割を演じることを昨年度報告した。上記のように、今年度はヒト大腸癌組織におけるHYBIDの発現レベルやヒアルロン酸分解作用に関して研究を進め、癌細胞浸潤先端部におけるヒアルロン酸分解と癌細胞浸潤におけるHYBIDの役割がかなり明らかにされ、今後得られる実験データを加えて論文化する予定である。また、HYBID ノックアウトマウスと野生型マウスの大腿骨中央部に横断骨折を作製し、骨折治癒過程をマイクロCTと骨組織切片で検討し、HYBIDノックアウトマウスで骨折治癒が遅延するとのデータを得ており、現在その分子メカニズムを解析中である。以上のように、HYBIDの病的組織での発現調節機構やヒアルロン酸分解を介した作用が明らかになりつつあり、本研究の進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌組織におけるHYBIDの発現レベルやヒアルロン酸分解作用に関して継続的に研究し、ヒアルロン酸分解による癌細胞の浸潤でのHYBIDの役割を明らかにする予定である。また、HYBID ノックアウトマウスと野生型マウスの大腿骨骨折治癒モデルでは、HYBIDがどのようなメカニズムで骨折治癒に関与するかを引き続き検討し、HYBIDの骨折治癒における役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、分担者である望月早月氏の分担金に600円の未使用金が生じたためである。翌年度(2024年度)の分担金に合わせて実験試薬の購入を予定している。
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