研究課題/領域番号 |
22K07035
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
加藤 貴史 安田女子大学, 薬学部, 准教授 (40573423)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 核内PTEN |
研究実績の概要 |
PTENは細胞膜だけでなく核内でも重要ながん抑制機能を持っている。そこで、現在PTENの核内移行メカニズムを重点的に解析している。細胞内局在に重要なアミノ酸は13番目のリシンがユビキチン化されていることとC末端側にあるC-tail domainがリン酸化されないことが必要であることは明らかにされた。しかしながら、C-tail領域のリン酸化がどのような分子機構により細胞内局在を制御しているかは分かっていない。これまで、リン酸化されていると分子内で結合することにより、閉鎖構造を形成し細胞質に留まるが、リン酸化されないと開放構造を形成し核移行するようになると考えられてきた。したがって、C-tail該当領域のセリン・スレオニンをアラニンに変換させたPTEN(A4)変異体は核内に蓄積する。しかしながら、PTEN(A4)に野生型のC-tailを加えたところ、ともに核に局在していた。これは、閉鎖構造に類似した構造をとるにも関わらず、核に移行することから、別のメカニズムを考える必要が出てきた。そこで、PTENの核移行に関するアミノ酸は他にもあるのではないかと考え解析を行っている。まずN末端から350アミノ酸までのPTEN350(c-tail直前)は核内に蓄積するが、全長では細胞全体に局在するので、どのアミノ酸が加わることで局在変化をするのかを解析したところ、386番目のアスパラギン酸が決定していることが分かった。さらにアスパラギン酸が重要であることを確かめるためにアスパラギン酸をアルギニン(PTEND386R)やアラニン(PTEND386A)に変換したところ、核に局在した。これらのことから、PTENの細胞内局在が386番目のアスパラギン酸が細胞質に留まるのに必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、培養細胞を用いたPTENの核移行メカニズムやDNA保護作用に関する解析を集中的に進めている。これは、当初予定していた核内にPTENを入れる遺伝子治療よりも効果的な方法を探索するためである。これらの研究を行うことで、より効率の良い遺伝子治療法の開発を検討したいと考えているため、本来予定していた研究が少し遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、行っている研究をさらに促進するための方策としては十分な研究時間の確保が挙げられる。そのためには、研究以外の業務を効率よく仕上げることとし、今よりも研究を量的に推進していく。また、研究指導している学生たちと研究に関して密接に議論を重ね、その方向性を共有し、研究を質の点でも推進していく。これらをさらに意識して取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
十分な研究時間を確保できなかったため、予定通りに進めることができず、次年度使用額が生じてしまった。次年度は、その遅れの分も含めて研究を推進していく予定である。
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