研究課題/領域番号 |
22K07040
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
入子 英幸 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (60346674)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生殖母体 / 熱帯熱マラリア原虫 / 原虫タンパク質輸送 / 接着分子 |
研究実績の概要 |
熱帯熱マラリア患者の末梢血中には、リング期と成熟生殖母体が検出される。赤血球侵入24時間以降の無性生殖期では、感染赤血球表面にはknobと呼ばれる凸構造が形成され、PfEMP1などの接着分子が発現し血管内皮細胞との接着が起こる。これに対し生殖母体期では、感染赤血球にknobが形成されずPfEMP1の発現もほとんど確認されないが、未成熟生殖母体が骨髄に集積することが報告されている。そのため、感染者体内における未成熟生殖母体の挙動は、無性生殖期とは異なる分子機構に起因すると予想されるが、生殖母体期の原虫タンパク質輸送の詳細は明らかにされておらず、生殖母体感染赤血球表面の接着分子も同定されていない。 本研究では、感染赤血球膜近傍に形成されるMaurer's cleftと呼ばれる膜構造に局在し、PfEMP1などの接着分子の輸送に関与するSBP1(skeleton binding protein 1)に着目し、生殖母体期におけるSBP1の発現時期および分子局在を解析した。SBP1抗体を用いた間接蛍光抗体法およびウエスタンブロットを行ったところ、生殖母体期のSBP1はステージ1から5の全てに発現することが明らかとなった。さらに、免疫電顕法による詳細な分子局在の解析を行ったところ、ステージ3以降ではLaveran's bib(感染赤血球の辺縁部)に集積したMaurer's cleftに局在することが明らかになった。また、生殖母体期の原虫タンパク質輸送におけるSBP1の機能を明らかにするためにCRISPR-Cas9システムを用いてsbp1遺伝子欠損原虫を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生殖母体期におけるSBP1の発現時期および分子局在に関する知見を得た。CRISPR-Cas9システムを用いてsbp1遺伝子欠損原虫を作出した。
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今後の研究の推進方策 |
sbp1遺伝子欠損原虫の表現型解析(無性生殖期および生殖母体期の発育、成熟生殖母体期の生殖体形成能など)を行う。野生型原虫およびsbp1遺伝子欠損原虫の生殖母体感染赤血球を用いた表層プロテオーム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の影響で一部入手困難となった物品、試薬があり、当初の計画とは異なる順番で実験を行ったため。
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