研究課題/領域番号 |
22K07041
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森田 将之 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 講師 (60709632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / AGIAタグ / 免疫電子顕微鏡法 / デンスグラニュール |
研究実績の概要 |
マラリア原虫の赤血球侵入型であるメロゾイトは赤血球寄生に特化した細胞内小器官を有する。本研究は、その中でも近年の代表者らの研究によってマラリア原虫の侵入や寄生維持に重要な分子が含まれることが見出されてきたデンスグラニュール (DG) の全貌を明らかにすることを目的としている。代表者の予備研究からDGは、RESAが局在するDG、SUB1が局在するDG、それらのどちらも局在しないDG、の少なくとも3種に免疫電子顕微鏡法 (IEM) によって分類できることが分かっており、それらが独自に機能化して原虫の赤血球寄生を緻密に制御していると考えられる。これまでに既知DGタンパク質には6種、また、代表者が独自に同定したDGタンパク質候補が29種あり、前年度はそれらタンパク質のC末端にAGIAタグを融合させてIEMでタンパク質局在を解析するために研究を遂行した。まずエピソーマル発現によって既知DGタンパク質であるPV1にAGIAタグを融合させてマラリア原虫内で発現させたが、免疫蛍光観察によりエピソーマル発現させたPV1-AGIAがDGに局在する結果を得られなかった。本エピソーマル発現系でタンパク質発現に使われるプロモーターは内在性のものとは異なるため、PV1-AGIAが正常に局在しなくなったと考えた。そこで、シングルクロスオーバーによってマラリア原虫ゲノムDNA中のPV1遺伝子にAGIAタグを組込んだ結果、PV1-AGIAは免疫蛍光法およびIEMでDGに局在する結果を得た。RESAとPV1-AGIAを共染色したIEMの結果、PV1-AGIAはRESAと同じDGに局在することが分かった。本方法によって既知DGタンパク質およびDGタンパク質候補へのAGIAタグ融合を進め、2022年度で計10種のタンパク質へのAGIAタグ融合に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の前半は当初計画していたエピソーマル発現系によるAGIAタグの融合を行ったが、シゾント期でAGIAタグ融合タンパク質が正常にDGに局在しないことが免疫蛍光観察により分かった。そのため、内在性タンパク質に直接AGIAタグを融合させるためにシングルクロスオーバーによるゲノムDNAの組換えを行うよう方針を転換した。以上の状況から現在、AGIAタグの融合が完了している遺伝子は10種のみで、当初の計画に対してやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、これまでに代表者が同定しているDGタンパク質候補にAGIAタグを融合させた原虫の作製を行う。作製が完了した原虫に関しては、AGIAタグ融合タンパク質の局在をIEMによって明らかにする予定である。また、DGマーカータンパク質にAirIDを融合させた近位依存性ビオチン標識技術によって各DG種の中に局在するタンパク質の網羅的同定も試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
エピソーマル発現系で問題が生じて研究の遂行が遅れてしまったために、物品費の使用が予定より少なくなったことによる。次年度は、2022年度に完了できなかった遺伝子組換え原虫を作製するための試薬、消耗品として使用する予定である。
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