研究課題/領域番号 |
22K07042
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井上 信一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20466030)
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研究分担者 |
バヤルサイハン ガンチメグ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80841353) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マラリア / CD4+T細胞 / IFN-γ / 免疫記憶細胞 |
研究実績の概要 |
ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)は、マラリア免疫の司令塔役としてその基盤をなす細胞である。その記憶細胞は、マラリア再感染防御に重要な役割を担っている。しかし、マラリアにおける記憶CD4+T細胞の分化・維持に関わる分子機構は、未だ謎に包まれたままである。IFNγ産生性のCD4+T細胞(Th1細胞)は、貪食細胞の原虫排除を促進してマラリア感染防御に働く。一方、このTh1細胞によってIFNγが過剰産生されるとマラリア病態発症・重症化につながる。マラリアにおいて、 Th1細胞によるIFNγ産生は、免疫応答が感染防御と病態発症の両者に関与する諸刃の剣となる。我々は、マラリア感染急性期までの時限的なIFNγ阻害により、マラリア原虫特異的な記憶CD4+T細胞の形成が促進されることを発見した。本研究では、IFN-γの時限的阻害による記憶CD4+T細胞の形成・維持機構の解明を目的とする。 本年度は、MHC-II拘束性の原虫特異的TCRトランスジェニックマウス(PbTIIマウス)とIFN-γR1マウスを掛け合わせたPbTII/IFN-γR1KOマウスから取り出したCD4+T細胞の移入実験系とマウスマラリア原虫Plasmodium chabaudiの感染実験系を組み合わせて、IFN-γR1KO/PbTII細胞群とコントロール野生型PbTII細胞群で、感染急性期(7日目)と記憶期(28日目)におけるPbTII細胞の分子発現とサイトカイン産生をフローサイトメトリーにて比較・解析した。IFN-γ中和実験の時とは異なり、IFN-γR1KO/PbTII細胞群では記憶CD4+T細胞の増加はみられなかった。これまでの実験結果より、IFN-γ抑制により記憶CD4+T細胞分化が促進されている可能性が示唆されたが、それはCD4+T細胞自身のIFN-γシグナル抑制が関与しているのではなく、別の細胞のIFN-γシグナル抑制関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想に反して、CD4+T細胞自身のIFN-γシグナル抑制はCD4+T細胞の記憶化を促進する効果は見られなかった。これは、CD4+T細胞以外の細胞による影響を示唆している。着目する細胞を変更する必要があるため、やや遅れているとの判断となった。
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今後の研究の推進方策 |
CD4+T細胞自身のIFN-γシグナル抑制はCD4+T細胞の記憶化を促進する効果は見られなかったこと自体は予想に反していた。CD4+T細胞以外のIFN-γシグナル抑制がCD4+T細胞の記憶化に影響しているとすると、 CD4+T細胞以外の細胞からのサイトカイン等の介在因子による影響を示唆している。今後は、その実験データを論文として報告する作業を進めるとともに、IFN-γシグナル抑制がCD4+T細胞以外の細胞にどのような影響を与えるのか、どの様なサイトカイン産生に変動が見られるのかなどを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
CD4+T細胞自身のIFN-γシグナルにはCD4+T細胞の記憶化を促進する効果がなかったことから、他の細胞においてIFN-γシグナルが抑制されることで何らかの介在因子が産生され、CD4+T細胞の記憶化を促進していることが推測された。この様な想定外の結果から、実験でターゲットとする細胞や因子を変更する必要があったため、使用する購入品(抗体の種類)を想定から変更したため16万円の余りが生じた。ただし、次年度使用額は16万円程度であり、この額を用いて抗体試薬等を追加で購入する予定である。
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