研究課題/領域番号 |
22K07045
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐倉 孝哉 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60816726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / ガメトサイト / 解糖系 / 細胞内相分離 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫のエネルギー代謝はヒト体内では解糖系がATP合成の中心を担い、蚊のステージではミトコンドリアにおける電子伝達系に強く依存する。近年、赤血球感染ステージ(赤内期)と蚊へ伝播するステージ(ガメトサイト期)では、解糖系や呼吸鎖複合体の構成因子が異なることがプロテオーム解析により明らかとなったが、代謝機能に対する影響の詳細は分かっていない。本研究では細胞内相分離の観点から解糖系酵素の細胞生物学的解析と、代謝フラックス解析による代謝機能の定量評価を並行して行い、ステージ分化に伴うエネルギー代謝変化の制御機構を明らかにする。 令和5年度はホスホフルクトキナーゼ(PFK9)に蛍光タンパク質をラベルした遺伝子組換え原虫を用いて、全反射照明蛍光顕微鏡による一分子イメージングを実施した。詳細な画像解析により、低グルコース培養下においては数時間で通常培養条件よりも大きな酵素集合体が形成されることが明らかとなった。 さらに他の解糖系酵素に蛍光タンパク質をラベルした遺伝子組換え原虫を作製し、低グルコース培養下での酵素の細胞内局在解析を実施した。これまでに10個の解糖系酵素のうち7個の解析を終え、PFK9に加えてホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)も低グルコース培養下で解糖系酵素集合体、Glycolytic body(G-body)を形成することが明らかとなった。PGKは解糖系において最初にATPを合成する反応を触媒する酵素であり、この結果は酵素集合体形成によって解糖系の活性化が起こっている可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤内期の7個の解糖系酵素の組換え原虫作製および酵素の細胞内局在解析を終えたため。マラリア原虫の液-液相分離に関する研究はこれまでに報告はなく、令和5年度に国際学会での発表を終え現在、投稿論文が査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は残りの赤内期の解糖系酵素の組換え原虫作製に注力する。これらの遺伝子に関してはSelection-linked integration法では組換え原虫が確立できなかったため、CRISPR-Cas9法に変更して組換え原虫作製を行う。また並行してガメトサイト期の解糖系酵素の解析および代謝フラックス解析も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定を変更して令和5年度は赤内期の実験に注力したため、ガメトサイト期の実験用の物品購入が少なく、次年度使用額が生じた。繰り越した経費については令和6年度にガメトサイト期の実験用の物品購入に充てる予定である。
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