研究課題
病原体の細胞表面タンパク質は、宿主認識や組織への侵入に関与する。一般的に分泌タンパク質にはN末端にシグナルペプチドが存在し、小胞を介して細胞外に分泌される。しかし、シグナルペプチド非依存型の分泌タンパク質も病原体や宿主細胞で報告されている。申請者は、赤痢アメーバの100種以上に多様化したRab GTPaseのうち、Rab2 isotypeがC末端ではなくN末端に脂質修飾を受ける可能性があることを見出しており、Rab2 isotypeの輸送の特殊性を明らかにすることが目的とする。赤痢アメーバのRab2ファミリーは3つのアイソタイプから構成される。EhRab2Aは785, EhRab2Bは214,EhRab2Cは232アミノ酸残基である。RNAseq解析を行うと、EhRab2Aの発現は非常に低く、EhRab2BとEhRab2Cの発現は低いものの、栄養体での発現が確認された。ゲノムデータベース情報では、いずれも転写開始メチオニンの直後にイントロンが存在している。特にEhRab2AはN末端にkinase domainが融合して発現しているのが観察された。EhRab2AとEhRab2Bは赤痢アメーバとその近縁種E. nuttaliあるいはE. moshkovskiiに存在するが、EhRab2Cは系統的に離れたE. invadensには存在せず、哺乳動物に特異的なEntamoeba に存在していると考えられた。またEhRab2CはN末端に疎水性の伸長配列が存在した。EhRab2ファミリーにはC末にシステイン残基はなく、N末にシステインが2つ存在する。このN末のシステインはSパルミトイル化されることを複数の予測モデルで確認した。EhRab2Bがパルミトイル化されるなら、膜に局在が確認できると考え、EhRab2B-GFP融合を発現する形質転換アメーバ株を作成したところ、GFPの局在は可溶性画分に観察された。融合したGFPの分子量が大きく、EhRab2Bの膜局在に阻害的に作用したことを考慮し、浸水性で小さなFLAGタグを融合することを試みている。
3: やや遅れている
ゲノムデータベース情報を確認することから始めたため、多少プロジェクト遂行に遅れは出ているが、確実にデータを出すために必要だと考えている。
EhRab2Cファミリーを安定的に発現する形質転換アメーバと遺伝子発現抑制株を作成することにより、EhRab2ファミリーの機能解析を進める予定である。
出席を予定していた学会に参加を見送ったため
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IJID Regions
巻: 7 ページ: 130~135
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