研究課題/領域番号 |
22K07050
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中野 由美子 (斉藤由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (30321764)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Entamoeba histolytica / 感染症 / メンブレントラフィック / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
赤痢アメーバの多様化したRab GTPase のうち、Rab2アイソタイプはC末端ではなく、N末端の修飾を受けることが指摘されている。赤痢アメーバだけでなく、マラリア原虫でもN末端にミリストイル化とパルミトイル化修飾を受けるRab5b GTPaseが細胞表面への輸送に関与していることを報告して来た。今年度では、赤痢アメーバの多様化したRab GTPaseのうち、小胞体から細胞表面への輸送に関与するEhRab8Aによって制御される表面分子EhTolAの機能解析を行った。EhTolAはEhRab8Aの発現抑制によって表面への輸送が低下し、EhTolAの発現抑制株は赤血球の接着と貪食効率が低下することが分かっていた。EhTolAの接着能に普遍性があることを確認するために、EhTolA発現抑制株のプラスチックプレートへの接着能を評価した。通常の細胞培養用のプラスチックプレートではEhTolA発現抑制株は接着能が野生株の半分に減少した。しかし、コラーゲンでコートしたプレートでは、接着能は野生株と同等であった。よってEhTolAが対象物に接着するのは、接着分子に特異性があるのではないかと考えられた。EhTolAのホモオグは赤痢アメーバゲノムに6個存在し、そのうち2個がN末端のグリシン残基を有する。また、人獣共通感染症のEntamoeba moshkovskiiでは5個のホモログのうちグリシン残基を有するものは1個。さらにヒトに病原性を示さないEntamoeba disparでは3個のホモログのうちグリシン残基を有するものは1個存在した。よって、ゲノムにコードされるTolAの数がヒトへの感染性に関係があるのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TolAの機能に対象物特異性があると考えられる結果、並びにEntamoeba種の中でTolAの多様性があると考えられる結果によって、研究は当初予測しなかった方向に進みつつあるが、シグナルペプチドに依存しない輸送経路の探求という目的には適するものである。
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今後の研究の推進方策 |
対象物の特異性を明らかにするために、死細胞のphagocytosisと生細胞のtrogocytosisに関与があるかどうかを解析する。また、TolA発現抑制株を動物感染モデルに接種して、in vivoでの定着性に変化があるかどうかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費と謝金が予想よりも安価であったため余剰が生じた。
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