研究課題/領域番号 |
22K07051
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大久保 寅彦 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (90762196)
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研究分担者 |
中村 眞二 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (40207882)
山口 博之 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40221650)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 微生物間相互作用 / レジオネラ / 繊毛虫 |
研究実績の概要 |
(1) 未知エフェクターの検出:作出済みのトランスポゾン挿入変異Legionella pneumophila (Lp) 菌株と繊毛虫Anteglaucomaの共培養実験を実施し、変異株全体(n=782)の約半数となるNo.360まで共培養実験を完了した。その結果、これまでに発見していた13株に加えて新たに11株の病原性喪失株(繊毛虫を殺滅しなくなった株)を選抜した。AP-PCR法とシークエンスによってこれら11株のトランスポゾン挿入部位を確認した結果、5株で特定に成功し、いずれもⅣ型分泌装置に関連するicm遺伝子(icmB, icmC, icmE, icmGのいずれか)が機能不全になっていたことがわかった。これらは繊毛虫に対するLpの病原性遺伝子だと考えられるが、LpがⅣ型分泌装置を介して宿主にエフェクター蛋白を注入することは既に判明しているので、今回発見した遺伝子はいずれも既知のメカニズム(Ⅳ型分泌装置依存的)に関連すると考えられ、未知の病原性遺伝子を発見するには至らなかった。 (2) ヒト細胞への病原性を確認するためにHeLa細胞とLp変異株の共培養を実施した。研究計画調書の段階ではTHP-1細胞の使用を予定していたが、まずは培養が簡易なHeLa細胞でスクリーニングを実施することとしている。上記で新たに病原性遺伝子を特定した5株をHeLa細胞と共培養した結果、元株(Lp JR32)と比べて生細胞率が上昇した。また、Lp変異株は元株と比べてヒト細胞内での集塊形成(蛍光顕微鏡観察)と細胞内生菌数(培養・qPCR)が有意に減少しており、病原性遺伝子の喪失によってヒト細胞内での増殖能が失われたことが確認できた。以上を踏まえると、今回見出したLpの病原性因子は繊毛虫とヒト細胞の双方に作用するものであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した「トランスポゾン挿入変異株を用いたエフェクター特定(1年目通年~2年目前半)」は計画どおり進捗しており、2年目前半までにすべての変異株の解析を完了する目途がたっている。イメージングについては上記の変異株が出揃ってからまとめて実施予定で2年目のうちに完了する見込みである。細胞への感染実験(2年目後半)についても同時期に実施予定であり、全体の予定と比較しておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きトランスポゾン挿入変異株と繊毛虫Anteglaucomaの共培養実験を継続し、当初予定通り2年目前半までに解析を完了する。その後はヒト細胞への感染実験、およびその際のイメージングを実施し、おおむね2年目のうちにLpがもつ繊毛虫に対する病原性因子を特定するとともに、その中に未知のエフェクターがあるかどうかを検証する。未知エフェクター(これまでに3つが候補に挙がっている)がどのような宿主側分子と会合するかについては3年目に解析する見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りの予算を使用した(執行率97.49%)が、消耗品をキャンペーン価格で購入した場合があったために次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合算し、消耗品費(物件費)として使用予定である。
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