研究課題/領域番号 |
22K07061
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
関谷 洋志 松山大学, 薬学部, 准教授 (70454890)
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研究分担者 |
神鳥 成弘 香川大学, 医学部, 教授 (00262246)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ディフィシル菌 / 溶菌酵素 / 菌種特異性 |
研究実績の概要 |
細菌の溶菌酵素は、ペプチドグリカンを分解する酵素であり、通常、触媒ドメインと細胞壁結合ドメインで構成されている。また、菌種特異的に溶菌活性を持つものがある。ペプチドグリカンのペプチド鎖は菌種によって異なる構造を持ち、これに作用する溶菌酵素(アミダーゼとエンドペプチダーゼ)は、触媒ドメインが菌種特異性に大きく寄与していると考えられるが、その分子メカニズムは解明されていない。本研究は、医療現場で脅威となっているディフィシル菌のアミダーゼとエンドペプチダーゼ活性を持つ溶菌酵素群について、それらの菌種特異性と立体構造を明らかにし、それらを比較解析することにより菌種特異性メカニズムを分子レベルで解明することを目指す。 本年度、エンドリシンEcd18980をコードすると推定された遺伝子の産物の生化学的解析を行った。Ecd18980は、N末端にアミダーゼ3ドメインを有するが、C末端ドメインは不明であった。Ecd18980とその触媒ドメイン(Ecd18980CD)をコードする遺伝子をクローン化し、N 末端ヒスチジンタグ付きタンパク質として大腸菌で発現させた。これらの精製タンパク質は、ディフィシル菌に対して溶菌活性を示した。Ecd18980CDは、野生型よりも強い溶菌活性を示し、ディフィシル菌に対してほぼ特異的な溶解活性を示した。この種特異性は、結合ではなく基質切断活性に依存すると考えられた。また、最適なpH、塩濃度、熱安定性など、Ecd18980CDの生化学的特性も明らかにした。 現在、触媒ドメインの活性に重要なアミノ酸の変異体解析も進めており、その他のエンドペプチダーゼやアミダーゼの候補遺伝子についても解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、生化学解析を行ったCD33800、CD18980の触媒ドメインの結晶化を行うとともに、酵素活性に重要なアミノ酸を同定するための変異体解析も並行して行っている。各研究の進捗状況は順調に進んでいるが、さらにディフィシル菌のゲノムDNA上にまだ多く存在する推定の溶菌酵素遺伝子もさらに解析を行う。それら溶菌酵素の立体構造からディフィシル菌のペプチドグリカンの構造を明らかにし、ディフィシル菌の溶菌酵素の菌種特異性メカニズムを分子レベルで明らかにする。そのためにも見出しているエンドペプチダーゼ、アミダーゼ遺伝子を随時解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、まだ未着手の推定のエンドペプチダーゼ、アミダーゼ遺伝子の産物の解析を行い、生化学的解析を行ったものから触媒ドメインの結晶構造を明らかにする。また結晶構造を明らかにしたエンドペプチダーゼ、アミダーゼの触媒ドメインの構造から、それらの菌種特異性と立体構造を明らかにし、それらを比較解析することにより菌種特異性メカニズムを分子レベルで解明することを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用予定であったが、年度後半に発注した物品がメーカー欠品による大幅な納期の遅延のため、当該年度助成金の次年度使用額が生じた。次年度の早期に納品可能との連絡をもらっており、次年度の研究を実施するために使用する。
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