研究課題/領域番号 |
22K07074
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
阪口 義彦 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (70403491)
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研究分担者 |
後藤 和義 岡山大学, 保健学域, 准教授 (20626593)
武 晃 北里大学, 医学部, 助教 (30818399)
大宮 直木 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00335035)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Clostridioides difficile / C. difficile感染症 / バクテリオファージ / 宿主特異性 / 尾部吸着分子 / 腸内フローラ / 治療 / 予防 |
研究実績の概要 |
Clostridioides (Clostridium)difficile感染症(CDI)は、C. difficileが原因で発症する難治性の下痢症・腸炎である。C. difficileは、抗菌薬の使用等により腸内の正常な細菌を構成する集団(フローラ)が乱れることで腸内で過剰に増殖する。CDIの治療において、抗菌薬の使用は有効であるが、再発を繰り返し治療が難渋することがある。そこで、原因となるC. difficileのみを特異的に殺菌する新規治療法の確立が急務である。研究代表者は、その治療候補の1つとしてバクテリオファージ(ファージ)に着目した。ファージは、自然界に普遍的に存在しており、宿主となる細菌に特異的に結合し溶菌活性を示す。本研究課題では、ファージの特性を利用したCDIの新規治療法の確立を目指し研究を行っている。昨年度においては、C. difficileに特異的に感染するファージのゲノム解析から、2つの推定宿主認識分子(尾部吸着分子)をスクリーニングし、これらを発現・精製(ORFA、ORFB)した。精製したORFAおよびORFBのC. difficile リボタイプ027株に対する結合を調べたところ、時間依存的および濃度依存的に結合したが、その結合性が不十分であると推察した。そこで、本年度は、Clostridium属菌の中でボツリヌス菌のファージに着目し、本ファージの尾部吸着分子について解析を進めた。既に、研究代表者は、ボツリヌス菌ファージについての研究経緯を有していることから、本ファージにおいても2つの推定尾部吸着分子(ORFX、ORFY)をコードする遺伝子を特定した。そこで、個別にORFXおよびORFYを発現・精製し、C型またはD型ボツリヌス菌に対する結合性を調べたところ、時間依存的および濃度依存的に結合することが明らかとなった。本結合性については、菌株間において特異性が異なることを明らかにした。現在、菌株間を認識する尾部吸着分子のメカニズムについて解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、Clostridioides difficileに結合するファージの尾部吸着分子を見出したが、その結合が不十分であると推察した。その結合性を知るためには、他の同属菌のファージの尾部吸着分子についても十分に理解することが重要であると考えた。そこで、ボツリヌス菌ファージの尾部吸着分子についても解析することとした。まず、ボツリヌス菌ファージのゲノム解析から推定した2つの尾部吸着分子を組換えタンパク質(Hisタグ融合ORFX、Hisタグ融合ORFY)として発現させるため、その条件(培地成分、温度、時間など)を検討した。本検討から至適条件を確立し、個々に精製することができた。そこで、2つのタンパク質のボツリヌス菌に対する結合性について、ウエスタンブロット解析により評価した。その結果、いずれもボツリヌス菌株間において結合性が異なることが明らかとなった。現在、菌株間を見分ける尾部吸着分子のメカニズムについて、C. difficileに結合する尾部吸着分子も含めて解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画により、ボツリヌス菌に結合する尾部吸着分子を見出すことができた。本研究成果により、ボツリヌス菌に結合した2つの吸着分子(ORFX、ORFY)は、菌株間において異なる結合性を示したことから、他の血清型のボツリヌス菌のファージの尾部吸着分子についても調べる。 1)他の血清型のボツリヌス菌ファージのゲノム解析から尾部吸着分子をコードする遺伝子を推定し、その遺伝子産物を発現させる。 2)尾部吸着分子の至適条件(培地成分、温度、時間など)を確立させ、コバルトアフィニティクロマトグラフィーにより精製する。 3)尾部吸着分子のボツリヌス菌に対する結合をEnzyme-Linked Immunosorbent Assay (ELISA) およびウエスタンブロット法により解析し、ボツリヌス菌に対する吸着分子の特異性を明らかにする。ウエスタンブロット法においては、画像解析装置一式を用いて作製した種々の吸着分子のC. difficileへの結合性を評価する。 4)作製した尾部吸着分子のClostridioides difficileに対する結合性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究成果により、バクテリオファージ(ファージ)の数種の尾部吸着分子の可能性を見出すことができた。そこで、次年度の研究計画では、個別に複数の推定尾部吸着分子を作製し、これらの機能解析を行う。今年度の未使用額は、次年度に繰り越して本実験で使用する培地やアフィニティー担体などを購入し、研究を遂行することにした。また、研究分担者の未使用額も同様の目的で使用する予定である。
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